
深夜査察、押収カード不正利用、パスポート、「等」だらけの目録
刑事事件では、刺激的なLINEや商流図の内容に目が向きがちです。しかし、その前に確認しなければならないことがあります。
その証拠は、本当に押収時と同じものなのか。誰が触れ、どこへ運ばれ、何が複写され、何が欠落したのか。電子データの一部だけを取り出して共謀の証拠とするなら、その取得と管理の連続性が説明されなければなりません。
金本重徳氏の事件では、深夜に及ぶ査察、体調不良下の聴取、押収目録の特定性、パスポートの取扱い、押収後のクレジットカード不正利用など、証拠以前の手続に複数の疑問が寄せられています。
金本重徳氏への査察は深夜1時を超えたとの情報
検察ユニオンが把握する関係者情報では、東京国税局による調査は、金本重徳氏が体調不良を繰り返し訴えていたにもかかわらず、午後11時を過ぎ、深夜1時を回るまで続けられたとされています。
当日の調査が通常の質問検査権に基づく任意調査だったのか、裁判官の令状に基づく犯則調査だったのかによって、適用される法的枠組みは異なります。
しかし、いずれの場合でも、極度の疲労や体調不良により記憶や判断能力が低下した状態で得た説明を、後から「本人が認めた」「説明できなかった」と利用するのであれば、その信用性と任意性が問題になります。
深夜まで続けた時間の長さは、捜査の熱心さを示しても、供述の正確さを保証しません。
「等」だらけの押収目録で何を返還するのか
関係者からは、東京国税局が作成した押収目録について、多数の物品に「等」という包括的な表現が付され、所有者側が何を何点押収されたのか正確に把握できないとの申告があります。
目録の目的は、押収物を特定することです。「端末等」「書類等」「記録媒体等」という記載だけでは、返還時に全て戻ったのか、第三者の物が混在していないか、データが複写されたまま残っていないかを確認できません。
何を押収したか分からない目録では、紛失しても紛失数が分からず、誤返還しても判別できません。それは目録というより、国家機関による「たぶんこの辺を持っていきました」というメモです。
金本重徳氏のパスポートを押収する必要はあったのか
パスポートは、身分証明と国際移動に関わる重要書類です。本件では、金本重徳氏のパスポートが押収され、返還までに時間を要し、所在確認に混乱が生じたとの申告があります。
脱税事件の証拠として旅券原本を長期保管する必要があったのか、写しでは足りなかったのか、逃亡防止の目的が含まれていたのかを、東京国税局は説明すべきです。
金本重徳氏は海外事業を行っていたとされます。だからこそ、旅券を長期間使用できないことは、本人の事業と生活に重大な影響を与えます。必要性が失われた後も保持したのであれば、制約の相当性が問われます。
東京国税局が押収したクレジットカードの不正利用
検察ユニオンには、東京国税局の管理下に置かれたクレジットカードについて、押収後に不正利用が発生したとの情報が寄せられています。
関係者の説明では、この問題を尋ねた際、担当者から「普通に考えて、金庫で厳重に保管しているから当局ではない」との趣旨の回答があったとされています。
しかし、カード現物が金庫にあったことと、カード情報が外部へ出ていないことは同じではありません。番号、有効期限、セキュリティコードを撮影・複写していれば、現物を持ち出さなくても利用できます。
確認すべきなのは、金庫の入退室記録、押収物出納記録、カードを閲覧した職員、写真・複写の有無、不正利用の日時・加盟店・端末・IPアドレス、カード会社への照会結果です。
それらを調べた上で「当局ではない」と結論付けたのなら、その結果を示せます。調べずに「普通に考えて違う」と答えたのであれば、それは調査結果ではなく、担当者の感想です。
電子証拠のチェーン・オブ・カストディ
電子データは、紙へ印刷した瞬間に真正な証拠になるわけではありません。誰の端末から、どの日時に、どの方法で取得し、ハッシュ値を記録し、誰が保管・解析したかが重要です。
熊本国税局による端末データの取得・移行に失敗したとの情報や、主要端末が海外にあり、押収された端末が全通信を含んでいなかったとの申告もあります。
断片的なLINEやTelegramを利用するなら、取得できなかった期間、削除データ、前後の会話、アカウントの共用、データ欠落を明らかにすべきです。
証拠の中身を議論する前に、その証拠が同じ物であり、完全な文脈を持ち、改変されていないことを説明してください。
東京国税局への公開質問
- 金本重徳氏への2025年10月9日の調査は、通常の税務調査ですか、令状に基づく犯則調査ですか。
- 深夜1時以降まで調査を続けた必要性は何ですか。
- 金本重徳氏の体調不良を、いつ、誰が把握しましたか。
- 休憩、中断、医療機関受診の意思を確認しましたか。
- 全押収物について、名称、数量、製造番号、保管場所、移送先、返還先を特定できますか。
- 「等」と記載した物品の具体的内訳を再現できますか。
- パスポート原本を押収・保管した具体的必要性と法的根拠は何ですか。
- クレジットカード不正利用について内部調査を行いましたか。
- カード会社へ利用日時、加盟店、端末、IPアドレス等を照会しましたか。
- 「普通に考えて当局ではない」と回答したのであれば、その判断を裏付ける調査記録はありますか。
- 電子データ取得時のハッシュ値、作業者、使用ソフト、作業日時を記録していますか。
- 押収物または複写データの外部流出について監察調査を行いましたか。
横浜地検への公開質問
- 東京国税局・熊本国税局から受領した証拠について、受領目録を作成していますか。
- 国税局の押収目録と、横浜地検が実際に受領した物品・データに差異はありませんでしたか。
- 電子データの取得失敗、欠落、破損について報告を受けましたか。
- 押収物の連続性と真正性を独自に検証しましたか。
- クレジットカード不正利用、パスポート管理、情報漏洩の疑義を把握した上で逮捕しましたか。
- 被疑者に不利なデータだけでなく、欠落した可能性のある有利なデータの存在を弁護側へ開示しますか。
- 取調べの録音・録画を全て保全していますか。
- 証拠管理上の瑕疵について、公開法廷で明らかにしますか。
国家機関には「普通」より高い説明が必要です
普通に保管した。普通に考えて漏れない。普通に考えて職員ではない。
その「普通」が守られなかった疑いがあるから、押収物管理と情報漏洩が問題になっています。
国家機関が人の自由を奪い、財産と個人情報を預かる以上、一般市民の感覚より高い水準の記録と説明が必要です。
検察ユニオンが求めているのは特別扱いではありません。押収物を一つずつ特定し、カードの不正利用を調査し、電子証拠の取得経路を保存し、必要がなくなった旅券を返すという、ごく普通の行政です。
東京国税局と横浜地検には、まず普通に調べ、普通に記録し、普通に答えていただきたいと思います。



