【国税局最弱列伝⑤】最弱組織と呼ばれる国税局は記者クラブまで壊すのか

目次

逮捕日、被疑者情報、共犯者、関係者の所在まで漏れ、NHKが逆に“取材される側”へ

熊本国税局の情報漏洩力が強すぎて強制捜査が空振り、取材先では録音・録画を準備される――「リークすれば勝てる」時代の終焉

国税局査察部にとって、記者クラブは長年、非常に強力な装置だったのではないでしょうか。

まだ裁判所が事実認定していない。

まだ本人の反論も十分に聞かれていない。

それでも、

「脱税」

「逮捕」

「共犯者」

「立件」

という言葉が先に報道されれば、対象者の社会的信用は一気に揺らぎます。

取引先が離れる。

金融機関が警戒する。

家族が巻き込まれる。

周囲から連絡が殺到する。

国家機関が直接圧力をかけなくても、記者クラブ経由で社会そのものが対象者へ圧力をかける。

それは極めて効率的な仕組みだったのでしょう。

ところが今回、その仕組みが見事なまでに逆回転し始めています。

■逮捕情報を流した側が、逮捕できなくなるという皮肉

関係者から寄せられている情報では、本件では中野爵喜氏の逮捕時期、立件対象となる人物、共犯者とされる人物に関する情報などが、強制捜査より相当前から周囲へ流通していたとされています。

さらに、いわゆる馬見塚メモとされる資料には、

「検察庁には既に連絡、相談」

「検察庁はやる気」

「鹿児島地検、福岡高検」

など、捜査機関の方向性を想起させる記載まで存在するとされています。

そして関係者によれば、中野爵喜氏の逮捕予定日そのものまで事前に知られていたというのです。

これが事実なら、相当に異常ですが、馬見塚メモの内容からすれば、まったく違和感はありません。

強制捜査で最も重要なものの一つは、相手が知らないことです。

■逮捕日を先に知らせてしまう強制捜査とは何なのか

逮捕。

捜索。

差押え。

こうした強制処分は、通常、事前に正確な日時を対象者側へ知らせないから意味があります。

相手が証拠を移す前に押さえる。

関係者同士が対応を相談する前に動く。

そのための強制性です。

ところが、

「何日に来るらしい」

「誰が対象らしい」

「次は誰を共犯者として扱うらしい」

という情報まで広く知られていたのだとすれば、強制捜査というより、予告イベントになってしまいます。

■その結果、押収日に関係者はいない

関係者側からは、事前に強制捜査情報が広がっていたため、当日に重要な関係者が全員現場にいなかった、あるいは押収対象となった場所に人物が不在だったという事例が複数あったとの情報も寄せられています。

これが事実なら、国税局にとってかなり屈辱的な構図です。

情報を集めるために強制捜査する。

しかし、強制捜査する情報を先に漏らす。

その結果、現地に誰もいない。

ここまでいくと、捜査対象者側の対応能力より、捜査機関自身の情報管理能力の方が問題です。

■「押収日には不在」が偶然なのか、それとも漏洩の結果なのか

もちろん、強制捜査当日に誰かがいなかった。

それだけなら偶然かもしれません。

しかし、

  • 逮捕時期。
  • 立件情報。
  • 対象者。
  • 共犯者。
  • さらに捜査機関名。

そうした情報が事前に流通していたとする資料や証言が複数存在し、その上で、「当日にいない」という現象が続くのであれば、偶然で片付ける前に、誰がいつ何を外部へ出したのかを調査する必要があります。

■しかも「共犯者の住所が分かるレベル」の情報まで漏れたとの指摘

さらに関係者情報では、共犯者とされた人物について、周囲が居住先を特定できるほど具体的な情報まで外へ出ていたとの指摘があります。

この情報の出所は慎重に確認する必要があります。

しかし、もし捜査機関が保有する住所・所在情報が報道機関その他へ流れていたのであれば、単なる「事件概要の説明」という次元を超えます。

国家公務員法100条は、国家公務員に対し、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならないと明記しています。退職後も同様です。

だから問われるのは、メディアと仲が良かったかではありません。

何を、どこまで、誰が提供したのかです。

■そしてNHKが関係者宅へ来る

ここからが今回の「最弱列伝」で最も興味深い部分です。

関係者情報によれば、NHK側は国税・検察周辺から得たとみられる情報をもとに、共犯者とされる人物やその関係者の所在へ取材に向かったとされています。

従来なら、NHKが行く。

インターホンを押す。

質問する。

カメラを向ける。

相手が慌てる。

それで終わったでしょう。

しかし今回は違ったという。

待たれていた。

■NHKが取材する前に、NHKを取材する準備ができていた

関係者側では、事前の情報流通を把握していたため、NHK等の報道関係者が来訪する可能性を想定し、

  • 録音。
  • 録画。
  • 複数人による確認。

を準備していたとの情報があります。

そして実際にNHK側が訪れた際、関係者らは逆に、

「その情報をどこから入手したのですか」

「なぜこの住所を知っているのですか」

「誰から共犯者だと聞いたのですか」

と質問したとされています。

つまり、取材しに行ったNHKが、情報源を説明するよう取材される側になった。

■記者クラブ史上、かなり珍しいカウンターではないか

この構図はかなり象徴的です。

これまで情報量では、

捜査機関。

記者クラブ。

被疑者・関係者。

という一方向だったはずです。

しかし、

  • 録音。
  • 録画。
  • SNS。
  • クラウド。
  • 情報公開。
  • 時系列検証。

が当たり前になったことで、今度は、

捜査機関。

記者クラブ。

関係者。

「では、その情報は誰から聞いたのですか」

と逆流する。

記者クラブを利用していた側からすれば、想定していなかったカウンターでしょう。

■NHKが逃げれば、それで問題が消えるのか

関係者側の説明では、情報源について質問されたNHK側が明確な回答を避け、その場を離れようとする状況もあったとされています。

当然、報道機関には取材源秘匿という重要な原則があります。

それ自体を否定する話ではありません。

しかし、取材源を秘匿することと、その情報が適法に取得されたものかは別問題です。

例えば、

  • 国税局しか持っていない情報。
  • 検察しか持っていない情報。
  • 本人しか知り得ない住所。
  • 強制捜査前の逮捕日。

こうした情報が報道機関へ渡っていたなら、取材源秘匿によって、公務員側の情報管理の適法性まで消えるわけではありません。

■国税局はNHKを“盾”にしたつもりが、“証人”にしてしまったのではないか

ここが新しい問題です。

捜査機関が記者クラブへ情報を出す。

報道機関が取材に行く。

そこで取材先に録音・録画される。

すると、報道機関がその時点で何を知っていたのかそのものが記録されます。

つまりNHKは、単なる情報伝達者ではなく、場合によっては、「いつ、どの情報が既に外部へ流れていたか」を示す時系列上の重要人物になります。

国税局からすれば、メディアを使って圧力をかけたつもりが、結果として、自分たちから情報が出た時期を特定する手掛かりを増やしてしまった可能性があります。

■これは記者クラブを「利用した」どころか、壊しているのではないか

報道機関と捜査機関の関係には、一定の信頼が必要です。

捜査機関が事件概要を説明する。

記者が確認する。

報道する。

その関係が成り立つのは、捜査側が、「ここまでが公表可能な情報です」という線を管理しているからです。

ところが、

  • 逮捕日。
  • 対象者。
  • 共犯者。
  • 所在地。
  • 捜査方針。

まで事前に流れる。

その情報で記者が現場へ行く。

現場では待ち構えられ、「誰から聞いた」と追及される。

これを繰り返せば、報道機関側だって、国税局から情報を受け取ること自体がリスクになります。

■「国税局からネタをもらうと逆に録音される」時代になるのか

ここまでくれば、記者側の合理的な行動も変わるでしょう。

以前なら、「国税から情報が来た」それは価値のあるスクープだった。

しかし今後、「その情報をもらって現場へ行くと、逆に誰から情報を得たのか問い詰められ、全部録音される」となれば、情報を受け取ること自体に警戒が必要になります。

つまり国税局は、自分たちの漏洩力の強さによって、記者クラブとの情報交換関係そのものを壊しかねない。

かなり皮肉です。

■最弱なのに、情報漏洩力だけは最強なのか

本件を追っている関係者から、「国税局最弱」などという強烈な揶揄が出ている理由は、国税局に権限がないからではありません。

むしろ、権限は強い。

  • 押収できる。
  • 査察できる。
  • 告発できる。
  • 検察へ事件を渡せる。

問題は、秘密にしておくべき情報だけが異常な速度で外へ出ているように見えることです。

捜査能力ではなく、情報漏洩能力だけが突出している。

これでは笑い話にされます。

■馬見塚メモが象徴する「先に全部ばれる捜査」

馬見塚メモとされる資料が象徴的です。

鹿児島地検。

福岡高検。

検察はやる気。

虚偽出資。

こうした言葉が事前に外部へ流通していた。

さらに逮捕日まで漏れていたとする情報まである。

そうであれば、対象者側は、「次に何が来るか」を予測できます。

それは捜査機関にとって最悪の状態でしょう。

■強制捜査が“サプライズ”ではなく“予定表”になったら終わりです

捜査機関が本当に恐れるべきなのは、対象者が強い弁護士を付けることでも、海外へ行くことでもないかもしれません。

もっと単純です。

予定を読まれることです。

  • 何日に来る。
  • 誰を狙う。
  • どこへ来る。
  • 何を押さえる。
  • 次は誰を呼ぶ。

ここまで読まれれば、強制捜査の実効性は劇的に落ちます。

だから、逮捕日まで漏れたという情報が本当なら、この事件で最も重大な失敗の一つでしょう。

■そしてまた「不在」――押収力ではなく漏洩力が勝ったのか

強制捜査当日に関係者が不在。

別の押収日にも不在。

そうした情報が重なるなら、国税局は一度、自分たちの内部を調べた方がいい。

対象者が異常に勘がいいのか。

偶然なのか。

それとも、国税局自身が予定を教えているのか。

ここを確認しないまま、さらに捜査を続けても、同じことが起きます。

■「誰が漏らしたか」を調べる方が、次の逮捕より先ではないか

国家公務員法100条が守秘義務を明記しているのは、秘密を守ること自体が行政の信頼と機能に不可欠だからです。

本件で本当に、

  • 強制捜査予定。
  • 被疑者情報。
  • 共犯者情報。
  • 住所を推測できる情報。

まで外へ流れていたのなら、次の逮捕を考える前に、内部漏洩経路を止める方が先でしょう。

そうでなければ、次も同じです。

■NHKも国税局も「逃げ回る」という構図が事実なら、説明責任が逆転した

関係者情報どおり、NHK側が情報源への質問を避け、国税局側も問い合わせや説明から距離を置いているのであれば、かなり象徴的です。

これまで、納税者が国税局から質問される。

被疑者が記者から質問される。

という構造だった。

今回は逆です。

国税局が質問される。

NHKが質問される。

そして、答えられない。

これこそ完全なカウンターです。

■記者クラブは「捜査機関の広報部」ではありません

これはNHKを攻撃するための記事ではありません。

むしろ、報道機関を守るためにも必要な問題提起です。

捜査機関が、正式公表できない情報を非公式に渡す。

記者がそれを信じる。

現場へ行く。

そこで対象者側から、

「その情報は違う」

「誰から聞いた」

と追及される。

この構図では、記者自身が捜査機関のストーリーに巻き込まれる。

報道機関にとっても危険です。

■国税局のストーリーが間違っていたら、NHKが最前線で傷を負う

さらに重要です。

国税局が、「この人物が共犯者」という情報を渡す。

NHKがそれを前提に取材する。

後の裁判で、実は共犯認定が崩れた。

その場合、国税局は、「捜査中だったので」と言えるかもしれません。

しかし、実際に自宅まで行った報道機関は、

  • 映像も、
  • 取材記録も、
  • 対象者とのやり取りも残ります。

つまり、誤った捜査ストーリーの社会的コストを、報道機関が先に負担する可能性があります。

これでは記者クラブとの信頼関係も長続きしません。

■国税局最弱列伝――国税局が壊しているのは自分たちだけではない

ここが今回の結論です。

情報漏洩によって、

  • 強制捜査の実効性が落ちる。
  • 逮捕日が知られる。
  • 関係者が不在になる。
  • 報道機関が現場へ行く。
  • 待ち構えられる。
  • 録音される。
  • 情報源を聞かれる。
  • 説明できない。

そして報道機関まで、「最弱組織と呼ばれる国税から情報をもらうこと自体がリスク」になる。

これが本当なら、国税局が壊しているのは、自分たちの捜査だけではありません。

記者クラブという、これまで自分たちが利用してきた情報流通システムそのものです。

■リークが武器だった時代から、リークが証拠になる時代へ

昔、情報を先に持つ者が強かった。

今は違います。

誰が、いつ、何を知っていたか。

全部記録されます。

  • NHKがいつ来たのか。
  • 何を質問したのか。
  • どの住所を知っていたのか。
  • 誰の名前を知っていたのか。

それを録音・録画しておけば、後から、その情報がいつまでに外部へ出ていたかを逆算できます。

つまり、リークそのものが証拠になります。

■国税局は、情報を漏らすたびに自分たちの捜査履歴を外部へ刻んでいる

ここを理解しないと、同じことを何度でも繰り返します。

情報を流す。

記事になる。

現場へ記者が行く。

相手に記録される。

その記録が後の裁判、国家賠償、情報公開、監察で使われる。

つまり、非公式リークというものは、昔ほど「非公式」ではありません。

デジタル時代には、ほぼ全部痕跡になります。

■最弱と言われる理由は「捕まえられないから」ではない

国税局最弱列伝。

最弱なのは、逮捕できないからではありません。

そもそも国税局には逮捕権はありません。

弱いのは、自分たちの情報を自分たちで管理できず、その結果として、他機関・報道機関・強制捜査まで巻き込んで実効性を落としているように見えることです。

これは権限の問題ではありません。

組織能力の問題です。

■そして最後に――記者クラブまで破壊するつもりなのでしょうか

熊本国税局。

東京国税局。

鹿児島地検。

もし本当に、

  • 逮捕日。
  • 共犯者。
  • 住所を推測できる情報。
  • 立件対象者。
  • 捜査方針。

まで次々に外へ流していたのであれば、一度考えた方がいい。

その情報によって、対象者が慌てる時代は終わりつつあります。

今は、対象者側がカメラを回す。

録音する。

質問する。

情報源を追う。

取材記者の行動時刻まで記録する。

そして、「あなたはその情報をどこから知ったのですか」と逆に聞く。

この質問に、記者も、国税局も、答えられない。

それが現在の構図なら、記者クラブを使って圧力をかけるという古い成功体験は、もう完全に終わっています。

むしろ今、国税局がリークすればするほど、相手の証拠が増える。

NHKが動けば動くほど、情報流通の時系列が残る。

そして強制捜査を予告すればするほど、当日は誰もいない。

これ以上に見事なカウンターがあるでしょうか。

国税局最弱列伝。

国税局が次に守らなければならないのは、捜査対象者から証拠を隠されないことではありません。

まず、自分たちの捜査情報を、自分たちから守ること。

そこから始めた方がよさそうです。

国税ユニオンと検察ユニオンはこちらから

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