金本重徳氏のコンサルティングは本当に架空だったのか

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中野爵喜被告の「返金」と現場を見ない捜査

高額なコンサルティングは、工場から完成品が届く取引とは違います。成果物が一冊の報告書にまとまる場合もあれば、経営判断、取引先の紹介、危機対応、システム準備、日常的な相談、交渉の助言といった無形の役務が積み重なり、事業全体へ価値を与える場合もあります。

金本重徳氏の事件では、株式会社Nその他の関係会社から提供された役務について、「実態がない」「高額すぎる」「初めて会う前の期間から報酬が発生している」などの疑いが向けられているとの情報があります。

もちろん、高額な請求書が存在するだけで役務が実在したことにはなりません。取引の当事者が「コンサルティングだった」と説明すれば、何でも経費になるわけでもありません。

しかし、役務がなかったと判断する側にも、現場を調べる責任があります。契約書の表題と一部のチャットだけを見て結論を出し、日常の通信、事前準備、ソフトウェア、関係者調整、口座管理を確認していないのであれば、「架空」と決めるには早すぎます。

金本重徳氏の事業は、代表者一人の手だけで動いていたのか

企業経営では、代表者が全ての実務を自分で行うわけではありません。会計は会計責任者へ、契約実務は法務担当へ、システム開発は技術者へ、投資案件の調査は専門家へ委ね、代表者は報告を受けて最終判断を行うことがあります。

この分業を、国税局や検察庁自身も採用しています。国税局長が全ての対象者を自ら調査するわけではなく、検事正が全ての被疑者を自ら取り調べるわけでもありません。

それにもかかわらず、民間企業の代表者に対してだけ、「自分で全ての現場を見ていない」「詳細を即答できない」ことを不自然と評価するのであれば、論理が一貫しません。

金本重徳氏が実務の一部を中野爵喜被告や関係者に委ねていたとしても、そのこと自体は犯罪ではありません。問うべきなのは、誰が実際に何を行い、誰がその内容を把握し、誰が不正を認識していたかです。

金本重徳氏と会う前の準備は役務にならないのか

関係者情報では、一部のコンサルティング報酬期間が、金本重徳氏と担当者が初めて対面する以前から始まっていた点を、捜査機関が疑問視しているとされています。

しかし、例えば不動産投資の助言を行う場合、顧客と会う前から、対象地域の物件、価格推移、利回り、空室率、売れ残り期間、管理状況を調査することは珍しくありません。初回面談の当日から具体的な提案をするためには、事前準備が必要だからです。

システム開発や危機管理支援でも同様です。顧客と対面する前に、サーバー環境、仕様、想定シナリオ、資料、候補先を準備することがあります。

初めて顔を合わせた日を、役務開始の唯一の基準とすれば、オンラインで完結する業務、海外で行われる調査、面談前の市場分析は、全て価値がないことになってしまいます。

現在ソフトウェアが見つからないことと、過去に存在しなかったことは別問題

本件の役務には、社会保険料の見直し、情報分析、危機対応等に関するソフトウェアやシステムが含まれていたとの申告があります。また、中野爵喜被告の国外移動前後に、関連するソフトウェアが破損、消去、持出しまたは使用不能化された可能性について、関係機関へ被害申告が行われたとの情報もあります。

仮に現在、ソフトウェアの完成品が見つからないとしても、それだけで当初から存在しなかったとは言えません。ソースコード、更新履歴、サーバーログ、クラウドアカウント、バックアップ、仕様書、画面設計、開発担当者の通信を確認すれば、過去の存在と使用状況を検証できる可能性があります。

捜査機関の仮説に合わない資料が消えたのであれば、その消失経緯こそ捜査対象です。現物がないから架空だった、と結論だけを急ぐべきではありません。

中野爵喜被告の「返金」は、出資金のキックバックを意味するのか

本件では、中野爵喜被告が一部の金銭について「返金」と表現した通信があるとされています。しかし、「返金」は法律上、一つの意味に定まった言葉ではありません。

出資金の払戻し、借入金の返済、立替金の精算、売上金の引渡し、預り金の返還。日常会話では、いずれも「返す」「返金する」と表現されることがあります。

従って、「返金」という二文字だけを切り取り、出資金を当初から戻す密約があったと認定することはできません。誰が誰にどの債務を負い、どの契約に基づき、どの会計処理を行ったのかを確認する必要があります。

中野爵喜被告が金本重徳氏や関係者から金銭を借りていた、あるいは法人資金と自己資金を混同していたとの情報もあります。そうであれば、中野爵喜被告の「返金」という表現は、金本重徳氏の脱税意思ではなく、中野爵喜被告自身の資金認識を示している可能性があります。

金銭が見つからないなら、取引不存在だけでなく未払・流用も調べるべき

契約があるのに通常の銀行送金が確認できない場合、取引が架空だった可能性はあります。しかし、それ以外にも、代金未払い、相殺、貸付け、立替え、債権譲渡、担当者による留保や流用が考えられます。

本来あるはずの代金が見つからないなら、「取引はなかった」と決める前に、誰がその金銭を管理し、誰が口座へログインし、誰が送金操作を行ったのかを調べるべきです。

関係者情報では、一部の法人・海外法人・個人口座について、実際のログイン情報を中野爵喜被告だけが管理していたとの申告があります。これが事実なら、名義上の代表者だけでなく、端末、IPアドレス、認証記録、送金承認履歴を追う必要があります。

横浜地検・東京国税局への公開質問

  1. 金本重徳氏および関係者から押収したLINE、Telegram、メール、通話履歴を、前後の文脈を含めて確認しましたか。
  2. 契約書に明記されていない日常的な相談、情報収集、事業調整も役務として評価しましたか。
  3. 初回対面前に行われた調査・準備を役務ではないと評価した法的・実務的根拠は何ですか。
  4. 関連ソフトウェアについて、ソースコード、サーバーログ、バックアップ、開発履歴を確認しましたか。
  5. ソフトウェアの破損・消去・持出しに関する申告を調査しましたか。
  6. 中野爵喜被告が口座、端末、ログイン情報を管理していた事実を確認しましたか。
  7. 「返金」という表現について、借入金返済、立替精算、売上金引渡しの可能性を検討しましたか。
  8. 出資金を当初から戻す合意を示す、「返金」という言葉以外の客観的証拠はありますか。
  9. 送金が確認できない取引について、未払、相殺、貸付け、横領、詐取を検討しましたか。
  10. 役務不存在と判断した具体的な証拠を、公開法廷で示しますか。

現場を知らない者が、現場の不存在を決めてはならない

検察ユニオンは、説明された全ての役務が実在したと認定しているわけではありません。高額な報酬に見合う実態があったのかは、厳格に調べられるべきです。

同時に、捜査機関が「分からない」「見たことがない」「現在は確認できない」という理由で、過去の役務を架空と決めることも許されません。

記録を確認し、現場を知る者へ質問し、デジタル資料を解析し、各契約と金銭の原因を整理する。その手順を踏んだ上で結論を出すことが、検察と国税に求められる仕事です。

現場へ質問せず、通信記録を十分に読まず、消失データを探さない。それでも「役務はなかった」と言うのであれば、存在しないのは役務ではなく、調査の方かもしれません。

国税ユニオンと検察ユニオンはこちらから

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