中野爵喜被告・渡辺誠氏・齊藤悟志氏を追う国税の「足し算」を問う

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竜ケ崎税務署・松尾康成元事務官に約1億3500万円の脱税疑い

茨城県の竜ケ崎税務署に勤務していた松尾康成元事務官が、競艇の払戻金など約3億3400万円の所得を申告せず、所得税約1億3500万円を免れた疑いで、所得税法違反容疑による告発を受けました。また、税務調査で知り合った高齢女性から約1億5000万円を受け取ったとされ、そのうち約85万6000円について、虚偽の税額説明による詐欺容疑で書類送検されたと報じられています。

関東信越国税局は2026年8月7日、松尾康成元事務官を懲戒免職処分としました。詳しい内容は、朝日新聞の報道テレビ朝日の報道FNNプライムオンラインの報道で確認できます。

国税ユニオンは、松尾康成元事務官について、詐欺罪や所得税法違反の有罪が確定したと述べるものではありません。懲戒免職という行政上の処分は既に行われていますが、刑事責任は今後の捜査と裁判で判断されます。

その前提に立っても、今回の事案が税務行政へ与える衝撃は極めて大きいものです。税務調査で得た公的な接点から、調査対象者との巨額の私的金銭関係が生まれた。税金に関する虚偽説明が詐欺容疑の対象となった。競艇で得たとされる巨額所得について、税を取り扱う職員自身が申告しなかった疑いを持たれた。税の番人が居眠りをしたのではありません。番人の制服を着たまま、納税者の財布と自分の申告書の両方を扱った疑いです。

約1億5000万円の全額が詐欺容疑ではありません

まず、数字の意味を正確に分ける必要があります。報道によれば、松尾康成元事務官が高齢女性から受け取った現金の総額は約1億5000万円です。一方、詐欺容疑として具体的に報じられているのは、修正申告書に誤りがあり、新たに納める税金が発生したかのように説明して受け取った約85万6000円です。

刑法第246条第1項 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。

詐欺罪の成否を判断するには、欺く行為、相手の誤信、財物の交付、因果関係、故意などを具体的に確認する必要があります。約1億5000万円の全額について、現時点で刑法上の詐欺が成立したと断定することはできません。

残る金銭が贈与、貸付、立替え、その他どのような名目で交付されたのか。家族への仕送りなどとする説明が、個々の交付判断へどのような影響を与えたのか。税務職員という肩書への信頼が、女性の判断へ影響したのか。これらは今後、原本、口座、交付日、会話、文書及び関係者の供述によって明らかにされるべき事項です。

国税ユニオンがこの区別をするのは、松尾康成元事務官をかばうためではありません。中野爵喜被告をめぐる事件でも、所得隠し額、免れた税額、不正還付額、詐欺被害額など、意味の異なる数字を一つに足して人物像を膨らませてはならないと指摘してきたからです。外部の被疑者に求める正確さを、国税職員にも適用する。反対に、国税職員に適用する慎重さを、外部の被疑者にも適用する。それが公平です。

松尾康成元事務官をめぐって公表された数字

複数の報道で示された主な数字は、次のとおりです。

  1. 競艇の払戻金など、申告しなかったとされる所得は約3億3400万円。
  2. 免れた疑いがある所得税は約1億3500万円。
  3. 税務調査で知り合った高齢女性から受け取ったとされる現金は約1億5000万円。
  4. 虚偽の税額説明による詐欺容疑の対象として報じられた金額は約85万6000円。
  5. 勤務時間外を含む舟券の購入総額は約8億6000万円。
  6. 勤務時間中の舟券購入は2672回。
  7. 舟券の払戻金を引き出した回数は4195回。

約8億6000万円は舟券の購入総額であり、そのまま利益又は損失を意味する数字ではありません。約3億3400万円は申告しなかったとされる所得、約1億3500万円は免れた疑いがある税額、約1億5000万円は女性から受け取ったとされる総額、約85万6000円は具体的な詐欺容疑として報じられた金額です。

種類の違う数字を全部足せば、見出しは大きくなります。しかし、見出しが大きくなっても事実が正確になるわけではありません。国税と検察には、数字の桁だけで世間を驚かせる前に、その数字が所得なのか、税額なのか、交付額なのか、被害額なのかを説明する義務があります。

約1億3500万円対約7800万円 不名誉な単純比較では国税職員が約1.7倍です

ここで、中野爵喜被告をめぐる国税・検察の発表を受け、公開報道で示されてきた数字を、同じ電卓で確認します。

  1. 中野爵喜被告の最初の税法違反事件について、免れた税額と不正還付額を合わせて約1200万円と報じられています。
  2. 別法人をめぐる事件について、免れた法人税などと消費税の不正還付額を合わせて約6600万円と報じられています。
  3. 二つを合計した公開報道上の税額は約7800万円です。
  4. 松尾康成元事務官について告発されたと報じられる所得税額は約1億3500万円です。
  5. 差額は約5700万円で、単純な比率では松尾康成元事務官の疑われる税額が約1.7倍です。

税目、事件の構造、証拠、故意の内容、手続段階は異なります。したがって、この数字だけで刑事責任の重さを比較することはできません。中野爵喜被告の約7800万円も、決して小さな金額ではありません。

それでも、国税・検察の発表を受けた広報や報道が数字を並べ、足し、巨大な事件像を作るのであれば、同じ方法で自局職員も計算されることになります。中野爵喜被告は二つの事件を足して約7800万円。松尾康成元事務官は一人で約1億3500万円の脱税が疑われています。不名誉な数字競争に限れば、国税職員側の圧勝です。

もちろん、表彰台も優勝杯もありません。待っているのは捜査、追徴、被害回復、監督責任、そして国民への説明です。国税職員が数字で勝ったから笑えるのではありません。国税が外部の人間を数字で飾ってきた結果、自分の職員が同じ舞台へ上がったとき、皮肉が完成してしまったのです。

中野爵喜被告は、渡辺誠氏と国税・検察の足し算で巨大化した「足し算男」なのか

中野爵喜被告をめぐっては、本人の刑事責任だけでなく、渡辺誠氏、株式会社ラストワンマイル、複数法人、出資取引、外注費、貸付、広告費、資金還流、関係者間で「馬見塚メモ」と呼ばれている資料など、壮大な登場人物と数字が並べられてきました。

それぞれの事実が証拠によって立証されるなら、必要な課税、告発、捜査及び裁判を行うべきです。しかし、所得隠し額と免れた税額を足す、別法人の事件を足す、周辺人物の取引額まで同じ画面へ並べる、疑いの段階にある数字を一つの巨大な物語へまとめる。このような広報や報道によって、中野爵喜被告は実際の起訴内容以上に膨らんだ「足し算男」として世間へ提示されてきたのではないでしょうか。

さらに問われるのは、その足し算が誰の責任を大きく見せ、誰の責任を小さく見せるために働いたのかです。中野爵喜被告の名前を中心に据えれば、渡辺誠氏がどの取引を指示又は調整したのか、誰が最終的に利益を得たのか、株式会社ラストワンマイルの経営幹部や業務基盤がどのように関与したのかという問題は、背景へ退きます。

国税と検察が本当に事実を追うのであれば、代表者、名義人又は逮捕された人物だけを足し算の中心に置くのではなく、誰が設計し、誰が説明し、誰が承認し、誰が資金を動かし、誰が利益を得たのかを分けて確認すべきです。

齊藤悟志氏とラストワンマイルを調べずに、国税は何を調べたのでしょうか

検察ユニオンが確認した資料や寄せられた情報では、齊藤悟志氏について、制度を先行して利用したこと、他者への利用を了承又は評価したこと、専門家として制度を説明したこと、営業や紹介に関与したこと、巨額送金の際に銀行へ同席したこと、着手金を受領して後に返金したとされる記録が指摘されています。

これらの内容が事実であるなら、齊藤悟志氏は単なる同席者ではありません。制度の信頼性を専門家として補強し、利用を広げた役割が疑われます。また、その行為が株式会社ラストワンマイルの経営企画室長という地位、信用、設備、人員又は取引関係を背景として行われたのであれば、同社の監督責任、使用者責任及び利益帰属も検証対象になります。

もちろん、国税当局が資料を調査した結果、齊藤悟志氏やラストワンマイルに課税上又は刑事上の問題がないと判断する可能性はあります。その場合は、何を調べ、どの事実を確認し、どの理由で問題がないと判断したのかを示せば済みます。

しかし、中野爵喜被告や後発の投資家へ供述を求める一方、制度を先行利用し、専門家として説明したとされる人物や、その人物が在籍していた会社の記録を十分に確認していないのであれば、国税調査は順番を間違えています。利用者を責める前に、設計者と指南役を調べる。税の専門組織にとって、それほど難しい引き算ではないはずです。

国税庁の組織理念が、今回ほど完成度の高い皮肉になった日はありません

国税庁の組織理念は、「信頼で 国の財政 支える組織」を掲げ、不正を断固として許さず、公正かつ誠実に職務を遂行するとしています。

今回の報道と並べると、理念がそのまま風刺になります。納税者の無申告には厳正に対応する組織で、職員自身は約3億3400万円の所得を申告しなかった疑い。納税者へ正しい税額を説明すべき立場の職員に、虚偽の税額説明による詐欺容疑。勤務時間中は職務へ専念すべき職員が、2672回の舟券購入です。

国家公務員法第99条 職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

国家公務員法第101条第1項(必要部分) 職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。

松尾康成元事務官に対する懲戒免職処分は既に行われています。しかし、処分したから組織の責任まで消えるわけではありません。約3年間にわたる勤務中の反復行為、巨額の資金移動、調査対象者との私的関係を、上司、税務署、国税局の監察はなぜ早期に把握できなかったのでしょうか。

一般の納税者には、取引日、相手、金額、目的、領収書、通帳、スマートフォンの履歴まで細かく尋ねる。ところが自分の職員が勤務中に2672回操作しても、組織は長期間気付かない。国税の調査能力は、庁舎の外へ出た瞬間だけ高性能になる仕様なのでしょうか。

「前例のない悪質な不祥事」に必要なのは、驚きではなく検証です

紀藤正樹弁護士が紹介したX投稿では、国税幹部が「前例のない悪質な不祥事が次々と起きている」と危機感を示した旨が伝えられています。

また、ライブドアニュースの事案を伝えるX投稿に対しては、別の利用者から次の反応が寄せられました。

想像以上に酷い?

当該X投稿に対する国税ユニオンの答えは、金額の大きさだけを理由にするなら不十分です。しかし、税務調査という国家権限から生まれた接点が、調査対象者との巨額の私的金銭関係へ変わり、税の専門知識が虚偽説明に使われた疑いがある点まで含めれば、想像以上に深刻です。

「前例がない」と驚くだけでは、再発防止になりません。前例が本当になかったのか。過去には発見できなかったのか。内部で処理して公表しなかったのか。統計上の類型を狭く設定し、別の不祥事として数えていたのか。監察記録と処分記録を外部から検証できる形で公表する必要があります。

組織が自分で作った記録だけを見て「前例がない」と言うのは、監察の優秀さを示すとは限りません。暗い部屋で何も見つからなかったと報告し、照明をつけたかどうかには答えない。そのような調査なら、前例は永遠に見つかりません。

納税者には厳しく、身内には抽象的な謝罪で終わらせる二重基準

国税ユニオンはこれまで、国税当局が調査対象者へ対面での供述を迫り、提出された書面や客観資料を十分に検討せず、最終的には逮捕後の取調べによって不足する説明を補おうとする構造を指摘してきました。

納税者には、一円単位の説明を求める。回答が意に沿わなければ、故意、共謀、架空性、実体の不存在を疑う。それ自体、証拠があるなら必要な調査です。

ところが身内の不祥事になると、「深くおわびする」「綱紀を保持する」「再発防止に努める」という三つの言葉で閉じる。誰が見逃したのか、何が機能しなかったのか、同種事案がほかにないのか、被害回復をどうするのかは見えません。納税者へ向ける虫眼鏡を、庁舎の中では曇りガラスへ持ち替えているように見えます。

関東信越国税局・国税庁・熊本国税局への公開質問

  1. 松尾康成元事務官の行為を、いつ、誰からの情報によって把握しましたか。内部監察、被害者側の申告、金融機関、競艇事業者又は他機関のいずれが端緒でしたか。
  2. 税務調査終了後も調査対象者との私的接触が継続していたことを、当時の所属税務署は把握していましたか。
  3. 約1億5000万円の各交付について、交付日、金額、名目、説明内容、資金の使途及び返済の有無をどこまで確認しましたか。
  4. 詐欺容疑として具体的に報じられた約85万6000円以外の金銭を、贈与、貸付、立替えその他どのように整理していますか。
  5. 高齢女性への説明、税務職員という地位への信頼、心理的な働きかけが、各交付判断へ与えた影響を調査しましたか。
  6. 松尾康成元事務官が異動後も、女性又は関係者の申告情報、資産情報、調査記録へアクセスしていなかったかを確認しましたか。
  7. 他の調査対象者や納税者との間に、私的な金銭交付、借入れ、贈与、投資又はギャンブル資金の提供がなかったかを調査しましたか。
  8. 勤務時間中に2672回の舟券購入が行われたとされる期間、上司は勤務状況をどのように管理し、人事評価をどのように行っていましたか。
  9. 約8億6000万円に上る舟券購入資金と払戻金の経路を確認し、高齢女性から受け取った資金、給与、借入金、払戻金その他を区分して追跡していますか。
  10. 無申告所得に対する本税、加算税及び延滞税を、一般の納税者と同じ基準で賦課し、確実に徴収しますか。
  11. 高齢女性への被害回復、財産保全、相談支援及び国家賠償の可能性について、国税当局はどのような責任を負うと考えていますか。
  12. 本件を一職員の不祥事として閉じず、調査担当者と納税者の私的接触、職員の金融取引、勤務中の私用端末利用及びアクセスログを含む監察制度全体を第三者に検証させますか。
  13. 熊本国税局は、中野爵喜被告の二つの事件を合計した約7800万円と、所得隠し額その他の異なる数字を、国民へどのように区別して説明していますか。
  14. 熊本国税局は、渡辺誠氏による指示、資金管理、利益帰属、関係法人への影響及び国税・検察との接点を、どの客観資料で検証しましたか。
  15. 熊本国税局は、齊藤悟志氏による制度の先行利用、専門家としての説明、営業又は紹介、銀行への同席及び金銭授受を調査しましたか。
  16. 熊本国税局は、株式会社ラストワンマイルの肩書、信用、設備、人員、顧客情報又は社内決裁が一連の取引に利用されたかを調査しましたか。
  17. 中野爵喜被告の責任を大きく見せる足し算を行う一方で、渡辺誠氏、齊藤悟志氏及びラストワンマイルの役割を調査対象から引いていないと、どのように証明しますか。
  18. 国税庁は、松尾康成元事務官の事案と、近時の情報漏えい、無許可兼業その他の不祥事について、共通原因、発覚経路、監督上の見落とし及び再発防止策をまとめた公開報告書を作成しますか。

国税ユニオンが求める措置

  • 被害者の意思とプライバシーに配慮しながら、約1億5000万円の金銭交付、税務権限との関係、資金使途及び監督上の見落としを全面的に調査すること。
  • 国税庁内部だけで結論を出さず、法律、税務、心理、情報セキュリティ及び依存症問題の外部専門家を含む第三者検証を行うこと。
  • 調査対象者との私的接触、金銭授受、贈答、借入れ及び投資に関する届出と監督の仕組みを見直すこと。
  • 職員による納税者情報へのアクセス履歴を常時監査し、担当終了後や異動後の不自然な閲覧を自動検知すること。
  • 勤務中の反復的な私用端末利用や資金取引を把握できなかった管理体制を検証すること。
  • 中野爵喜被告をめぐる調査では、異なる種類の数字を分け、渡辺誠氏、齊藤悟志氏及び株式会社ラストワンマイルの役割を客観証拠から検証すること。
  • 不祥事の件数、類型、発覚経路、処分、管理職責任及び再発状況を毎年公表し、「前例がない」という感想ではなく検証可能な記録を示すこと。

松尾康成元事務官の「圧勝」で終わらせず、渡辺誠氏・齊藤悟志氏・ラストワンマイルへ

公表された疑いの税額だけを単純に比べれば、約1億3500万円の松尾康成元事務官が、約7800万円の中野爵喜被告を上回ります。国税職員の方が圧倒的に勝ったという皮肉は成立します。しかし、この競争に本当の勝者はいません。

高齢女性、誠実に申告してきた納税者、適正に働く国税職員、税務行政への信頼が、そろって損失を負っています。さらに、中野爵喜被告をめぐる事件が足し算によって巨大化し、その陰で渡辺誠氏、齊藤悟志氏、株式会社ラストワンマイルの役割が十分に検証されていないのであれば、真相そのものも損失を負っています。

中野爵喜被告の責任は、証拠に基づいて判断されるべきです。しかし、中野被告を「足し算男」に仕立てて事件の全てを背負わせれば、誰が制度を作り、誰が専門家として信用を与え、誰が会社の環境を使い、誰が資金を支配し、誰が最終的に利益を得たのかという問いが消えます。

国税が使うべき電卓は、外部の人間を大きく見せるための足し算機ではありません。松尾康成元事務官の事案では、自らの監督不全を計算する。中野爵喜被告の事件では、所得、税額、還付額、被害額を正しく分ける。そして、渡辺誠氏、齊藤悟志氏、株式会社ラストワンマイルに関する指示、説明、社内記録、金銭及び利益を一つずつ確認する。そのための道具です。

納税者には一円単位の説明を求めながら、身内には抽象的な謝罪、外部事件では巨大な足し算、周辺の中心人物には静かな引き算。このような計算を続ける限り、世間が国税を「腐っている」と見るのは避けられません。

国税ユニオンは、松尾康成元事務官の懲戒免職だけで幕を引くことを認めません。同時に、中野爵喜被告だけを事件の完成品として提示することも認めません。渡辺誠氏、齊藤悟志氏、株式会社ラストワンマイルを含め、誰が何を行い、誰が利益を得たのか。国税が納税者へ求めてきた証拠、数字、説明を、今度は国税自身へ求めます。

国税ユニオンと検察ユニオンはこちらから

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