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「押収物を返してほしければ取りに来いよ」と言われて取りに行ったら「原本は返せない」「閲覧もできない」――押収物還付請求権が運用で空文化される構造を、法律論で徹底検証する

~刑事訴訟法222条1項・123条1項が定める還付制度は、現場運用において何が起きているのか~

組合HPだからこそ書ける、法律論ベースの徹底追及

国税ユニオン|公式声明

本声明は、本件査察調査における押収物還付請求の経過と、それが示す押収物管理の構造的問題について、当組合の正式な見解を法律論として表明するものです。

目次

第一 事実関係の整理

本件における押収物還付請求の経過は、以下のとおりです。

第一段階として、令和7年から令和8年にかけて、熊本国税局調査査察部査察第3部門の川口延洋主査から、当組合員に対し、押収物の返還を求めるのであれば「取りに来いよ」という趣旨の対応が示されました。

第二段階として、当組合員側は、この対応を受け、差押目録を持参のうえ、押収物の引取りに赴きました。差押目録は、刑事訴訟法222条1項により準用される同法120条が、差押えを実施した捜査機関に対し交付を義務付けている公文書であり、押収物の同一性を特定するための法的根拠書類です。

第三段階として、当該引取りの場において、挙動不審のような態度をとられ、その後、二週間、電話も無視続けられ、同部門の岡博史主査から、北村厚国税局長の指示で「原本は返却できない」との対応が示され、さらに、「閲覧もできない」という対応にまで変化いたしました。

すなわち、川口主査の段階では「取りに来れば返す」という前提で運用されていたところ、現に取りに行った段階では、岡主査により「原本還付不可・閲覧不可」へと、対応の前提そのものが変質したのです。

第二 還付請求権の法的構造――刑事訴訟法222条1項・123条1項

押収物の還付について、現行法は明確な制度を定めています。

刑事訴訟法123条1項は、「押収物で留置の必要がないものは、被告事件の終結を待たないで、決定でこれを還付し」と定め、留置の必要が消滅した押収物は、事件の終結を待たずに還付されるべきことを、法律上の原則として明示しています。

そして、同法222条1項は、捜査機関による押収について、123条等の規定を準用すると定めており、国税犯則調査における押収物についても、留置の必要が消滅した時点で還付すべき法的義務が、捜査機関の側に生じます。

すなわち、押収物の還付は、第一に、留置の必要が消滅した時点で、第二に、押収を行った機関の側から、第三に、事件終結を待たずに、なされるべき法定の義務として、刑事訴訟法上明確に制度化されているのです。これは、「取りに来れば返す」「説明に応じれば返す」といった、運用上の任意的サービスではありません。

第三 仮還付制度と原本還付の関係――刑事訴訟法123条2項

ここで、本件のように「原本は返却できない」という対応が示された場合の法的評価を、正確に行う必要があります。

刑事訴訟法123条2項は、「押収物は、所有者、所持者、保管者又は差出人の請求により、決定で仮にこれを還付することができる」と定めています。これがいわゆる仮還付制度です。

仮還付制度の趣旨は、押収継続の必要性が完全には消滅していないものの、被押収者の生活・業務への影響を考慮し、原本を返還したうえで、必要に応じて再提出を求めるという、柔軟な運用を可能にすることにあります。

すなわち、現行法は、第一に、留置の必要が消滅した押収物については、123条1項により原本還付が義務となり、第二に、留置の必要がなお存続する押収物についても、123条2項により仮還付という形で原本還付が可能となっています。

つまり、現行法の構造は、原本還付を原則とし、留置継続を例外とするものなのです。

第四 「原本は返却できない」という対応の法的評価

以上の法的構造を踏まえれば、押収から二年間が経過し、質問検査が一度も行われていない押収物について、「原本は返却できない」という対応が示されることの法的評価は、極めて明確です。

第一に、留置の必要が消滅しているのであれば、123条1項により原本還付は法定義務です。「返却できない」という選択肢は、法律上存在しません。

第二に、留置の必要がなお存続するというのであれば、その必要性の具体的内容(どの押収物が、どの事実認定資料として、どのように活用されるのか)を、被押収者に対して説明する義務が生じます。説明なき留置継続は、必要性審査の客観的根拠を欠いた、恣意的留置として評価されます。

第三に、仮還付制度(123条2項)が制度化されている以上、原本還付の代替手段は法律上明確に用意されています。「原本は返却できない」という対応は、仮還付制度の検討が組織内でなされていないことを示唆するものであり、行政側の制度理解そのものに疑義を生じさせます。

第五 「閲覧もできない」という対応の法的評価――これは制度的にあり得ない

さらに重大なのが、引取りの場で示された「閲覧もできない」という対応です。

ここで、刑事訴訟法上の権利関係を正確に整理する必要があります。

押収物の所有者・所持者・保管者・差出人は、押収物について依然として所有権・占有権を完全に喪失したわけではありません。押収は、捜査・調査の必要性に基づき、これらの権利の行使を一時的に制約する処分であり、所有権そのものを国家に移転する処分ではありません。

すなわち、押収物の本来の権利者は、依然として被押収者であり、捜査機関は当該物を一時的に占有しているに過ぎないのです。

この法的構造のもと、自己の所有物・占有物について、押収機関の保管庫において閲覧することすら拒否されるという対応は、第一に、被押収者の所有権・占有権の本質的内容に対する、合理的根拠なき制約であり、第二に、現に「取りに来れば返す」という前提で被押収者を呼び出しておきながら、現場で対応を変質させる信義則違反であり、第三に、押収物の現存性・同一性・保管状態の確認すら不可能とする運用として、Chain of Custody(証拠の連続性)の検証可能性を、被押収者側から構造的に剥奪する運用です。

なお、押収物の捜査上の機密性を理由として閲覧が制限される場面があり得ることは、当組合も承知しております。しかし、本件押収物の中には、名刺ケース・パスポート・クレジットカード等、被押収者の日常生活・経済活動に直結する個別動産が含まれており、これらに捜査機密性を観念する余地は、客観的に乏しいといわざるを得ません。

第六 「取りに来い」から「原本も閲覧も不可」への対応変質が意味するもの

ここで、本件における対応の変質――「取りに来てください」から「原本も閲覧も不可」への急転――が意味するところを、法律論として整理いたします。

論理的に成立し得る可能性は、次のいずれかに限られます。

可能性A:当初から原本還付・閲覧拒否の方針が組織内で確定していたが、川口延洋主査の対応段階ではそれが現場担当者に共有されていなかった。

この場合、組織内の意思決定と現場対応の間に情報共有の断絶が存在することを意味し、押収物管理に関する組織ガバナンスの構造的欠陥を示します。

可能性B:川口延洋主査の対応段階では原本還付を想定していたが、現に被押収者らが引取りに赴いた段階で、押収物の所在・保管状況に何らかの問題が生じたことが判明し、対応を変質させざるを得なくなった。

この場合、押収物の所在・保管状況そのものに、社会一般に説明できない問題が存在することを示唆します。

可能性C:当初から原本還付の意思はなく、被押収者を現地まで呼び寄せることが目的化していた。

この場合、刑事訴訟法123条1項の還付義務を回避するために、被押収者の現地来訪を引き出す運用を行っていたことになり、還付請求権の意図的空文化として評価されます。

いずれの可能性であっても、結論は同一です。すなわち、現行法上明確に制度化された還付請求権が、運用において空文化しているという構造的事実です。

実際に、熊本国税局の査察調査においては、国税局には逮捕権がないにもかかわらず、対面調査に応じなければ逮捕するという発言が複数人に対して使われた実態があります。

第七 還付請求権の空文化は、なぜ深刻なのか

押収物還付請求権の空文化は、単なる一案件の運用問題ではありません。その深刻性は、以下の三点にあります。

第一に、刑事訴訟法123条・222条が定める還付制度は、国民の財産権(憲法29条)に対する押収という強力な権限を、必要最小限の範囲に留めるための、立法による安全装置です。この安全装置が運用において空文化すれば、押収という強制処分の法的限界そのものが崩壊します。

第二に、還付請求権の空文化は、押収物の実際の保管状況・所在・管理実態を、被押収者側から検証不能にします。これは、押収物の紛失、不正利用、改ざん等のリスクを、構造的に隠蔽する効果を持ちます。

第三に、還付請求権の空文化は、「説明に応じなければ返さない」という運用に直結し、押収物を事実上の「人質」として、任意調査における説明応答を引き出す圧力手段として機能させます。これは、令状制度が想定する押収の目的(事実認定資料の確保)を逸脱するものです。

第八 組合からの正式要請

以上を踏まえ、当組合は、熊本国税局調査査察部査察第3部門の関係各位、ならびに北村厚国税局長宛に、書面による正式回答を要請いたします。

第一に、川口延洋主査の対応段階と、岡博史主査の対応段階との間で、組織内の方針がどのように変質したか、その経緯と意思決定者の特定。

第二に、押収から相当期間が経過し、質問検査が一度も行われていない押収物について、留置を継続する具体的必要性は、押収物ごとに何か。

第三に、刑事訴訟法123条2項の仮還付制度の活用検討が、組織内でなされたか否か。なされていない場合、その理由。

第四に、押収物の閲覧拒否の法的根拠は、刑事訴訟法のどの条項に基づくものか。

第五に、押収物の現存性・同一性・保管状態を、被押収者側が検証する手段として、どのような制度を用意しているか。

結語――還付制度は、運用で空文化させてはならない

刑事訴訟法123条1項・222条1項が定める還付制度は、近代刑事手続法の根幹的安全装置です。この制度が運用において空文化することは、押収という強制処分そのものへの社会的信頼を、長期的に毀損します。

第二弾では、本件で生じた押収物管理の実態――現に保管されているのか、Chain of Custodyが維持されているのか、紛失の可能性は排除できるのか――について、引き続き法律論として徹底的に検証してまいります。

グローバルユニオン(国税ユニオン)
組合員一同
Web:https://globalunion-grp.org/mikata/u/kokuzeiunion/

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首都圏青年ユニオン連合会が運営する労働者のミカタです。労働者のミカタは、全てのブラック企業やブラック団体から、健全に働く労働者を守ります!

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