参考人に“原稿どおりの供述”を迫る検察組織
SNS上の投稿では、検察官の取調べを知る元捜査官による、容赦のない批判が書かれています。

もう一つの投稿では、現職検事を対象として行われた意識調査の数字が掲載されています。供述人が実際に話した内容とは異なる特定の方向で供述調書を作るよう、上司から指示された経験について、約4人に1人の検事が肯定的に回答したという数字です。
一つは、現場を見てきた人物の激しい言葉です。もう一つは、検察組織の内部から出てきた数字です。
その二枚を並べた直後、検察ユニオンへ寄せられた小林検事の発言を読むと、単なる偶然として片付けることが難しくなります。
「あなたは、立場を考えてものを言いなさいよ」
金本重徳氏に関する参考人取調べで、小林検事が参考人へこのように述べたとの情報が寄せられています。
小林検事は、参考人らを睨みつけるように見ながら、「本当にその態度でよいのか」「本当にその内容でよいか」「それは正しいことか」と繰り返したともされています。
これらの言動が実際に行われたかどうかは、取調べの録音録画、取調べメモ、供述調書、捜査報告書及び参考人自身の記録によって検証されなければなりません。
しかし、寄せられた情報が事実であるならば、検察官が参考人から事実を聞いていたというより、国家権力を背後に置き、検察官と参考人の上下関係を分からせようとしていたように見えます。
一枚目の画像が批判した「威圧と作文」
添付された一枚目の画像には、「佐藤誠(元警視庁捜査第一課)」と表示されたアカウントによる投稿が写っています。
投稿者は、検察官が自ら捜査を十分に行わず、取調べでは「怒鳴る、威圧する、強要する、脅す」といった方法に頼り、警察官が作った供述調書をなぞるか、自分で考えた物語を文章にして署名させる傾向があるとの趣旨で、極めて厳しい批判を行っています。
さらに投稿では、権力を誇示する検察官の態度について、「反社チンピラ」のようにいきがるとの表現まで用いられています。
言葉だけを切り取れば、相当に過激な投稿です。全国の検察官全員が、投稿に描かれたような取調べを行っていると事実認定することもできません。
しかし、参考人へ法令や証拠を示さず、相手を睨みながら「立場を考えてものを言いなさいよ」と告げた検事が実際にいたのであれば、この激しい批判と重ねて読まれても不思議ではありません。
これは、小林検事の人格や私生活を「チンピラだ」と断定する話ではありません。参考人から伝えられた取調べ上の振る舞いが、「権力を背にしたイキリチンピラのようだ」という厳しい社会的評価を招いても、小林検事の側から参考人の態度だけを責めることはできないという話です。
「立場を考えろ」は法律家の質問ではありません
小林検事が述べたとされる「あなたは立場を考えてものを言いなさいよ」という発言で、最も不可解なのは、その「立場」が何を意味するのかという点です。
参考人は、小林検事の部下ではありません。検察庁の人事評価を受ける職員でも、検察官へ従順な態度を示さなければ不利益を受ける身分でもありません。
参考人の立場は、自分が実際に見聞きしたことを説明する立場です。検察が作った事件の見立てを理解し、その見立てに沿う回答を提供する立場ではありません。
供述が客観的証拠と矛盾しているのであれば、小林検事は、その証拠を示して具体的に質問すればよいのです。
どの通信記録と矛盾するのか。どの契約書の記載と異なるのか。どの日時の説明が成立しないのか。どの法令のどの要件を問題としているのか。
それを説明せず、「立場を考えろ」と言うのであれば、検察官が問題にしていたのは供述の正確性ではなく、国家権力を持つ自分に対する参考人の態度だったのではないかという疑問が生じます。
参考人から見れば、まさに「イキリ」だったのでしょう
参考人へ曖昧な道徳論を繰り返し、回答が気に入らなければ睨みつけ、反論されると「立場を考えろ」と力関係を持ち出す。
この振る舞いが申告どおりであれば、参考人から「法律家ではなく、権力を背にしていきがる人物のようだった」と評価されても、何ら不自然ではありません。
検察官は、市民よりもはるかに強い国家権力を行使します。逮捕、勾留、捜索、押収、起訴という、人の人生を根本から変える手続に関与します。
だからこそ、検察官が「誰を相手に話しているか分かっているのか」と受け取られかねない態度を見せれば、一般の会社員や私人以上に厳しく評価されます。
小林検事が参考人を評価する前に、参考人と社会が、小林検事の言葉と態度を評価します。
その評価が、画像の投稿者が用いた「反社チンピラのようにいきがる」という表現へ近づいたとしても、原因は参考人が検察官へ頭を下げなかったことではありません。
小林検事自身が選んだとされる「立場を考えてものを言いなさいよ」という言葉です。
「原稿をください」は、参考人による極めて正確な診断でした
小林検事の取調べを受けた参考人の一人は、回答するたびに「本当にそれでよいのか」「正しいと思うのか」と問い直されたことから、次の趣旨で応じたとされています。
「それなら、嘘を言えばよいのですか。検察が欲しい答えが決まっているなら、原稿をください」
この発言は、参考人が虚偽供述をしようとしたものではありません。
自分が知っている事実を話しているのに、小林検事が納得するまで回答の変更を迫られているように感じたため、取調べの構造そのものを問い返した反語です。
検察が本当に事実を聞きたいのであれば、参考人が語った内容を記録し、客観的証拠と照合すればよいはずです。
ところが、検察官が既に正解を持ち、その正解が出るまで「本当にそれでよいのか」と繰り返すのであれば、参考人から見れば、質問ではなく原稿の読み合わせです。
この参考人が「原稿をください」と述べたのは、小林検事を挑発するためではありません。検察が求めているのが記憶なのか、検察の作文なのかを明確にするための、極めて論理的な問いでした。
それに対して小林検事が慌てたように見えたという情報が正しければ、参考人の一言が、取調べの本質へ触れた可能性があります。
二枚目の画像が示す「4人に1人」という内部の数字
一枚目の画像を、投稿者による感情的な検察批判だとして退けたい人もいるでしょう。
しかし、二枚目の画像には、検察内部の問題を数字で示す資料が写っています。
2011年に公表された現職検事への意識調査では、「供述人の実際の供述とは異なる特定の方向で供述調書を作成するよう指示された経験があるか」という趣旨の質問に対し、6.5%が「大変よく当てはまる」、19.6%が「まあまあ当てはまる」と回答しました。
肯定的な回答は合計26.1%です。およそ4人に1人の検事が、実際の供述と異なる方向で調書を作るよう指示された経験について、肯定的に答えたことになります。
福岡県弁護士会「検察の在り方検討会議の提言に対する会長声明」を読む
重要なのは、検事本人が勝手に供述を書き換えたという質問ではないことです。
上司から、特定方向の供述調書を作るよう指示された経験を尋ねた結果です。
ここまで来ると、小林検事の取調べを、単に「小林検事が偉そうな人物だった」という個人の問題だけで終わらせることはできません。
小林検事が参考人へ求めていた答えは、小林検事自身が作ったものだったのでしょうか。それとも、上司が決めた事件の物語を完成させるため、小林検事が参考人の口から回収しなければならなかった言葉だったのでしょうか。
小林検事の威圧は、上司の言葉をそのまま転送したものなのか
小林検事は、参考人へ「あなたは立場を考えてものを言いなさいよ」と述べたとされています。
では、小林検事自身も、横浜地検の上司から、同じように立場を考えるよう迫られていたのでしょうか。
小林検事が上司へ、「参考人は検察の見立てを否定しています」「金本重徳氏の故意を裏付ける供述は得られませんでした」「法的構成を支える客観的証拠が不足しています」と報告したとき、上司は何と答えたのでしょうか。
「お前は自分の立場を考えて報告しているのか」
「本当にその内容で決裁へ持ってくるつもりか」
「この事件を潰す気か」
実際にこのような発言があったと断定する資料は、現時点で確認していません。
しかし、大阪地検特捜部では、被疑者の言い分を先入観なく聞いて否認供述を得た検事が、指導担当検事から「事件を潰す気か」「ポンコツだ」などと罵倒されたとの手記が公表されています。
さらに、被疑者の説明を裏付ける可能性がある録音データについて、上司へ報告せず無視するよう指示されたとの告発も行われています。
江川紹子氏による大阪地検特捜部のパワハラと違法捜査強要に関する記事を読む
大阪で、上司から部下へ「事件を潰すな」という圧力がかかっていたのであれば、横浜でも同様の成果圧力が存在しなかったかを調べる必要があります。
小林検事が上司から受けた威圧を、そのまま参考人へ転送していたのだとすれば、「立場を考えろ」という言葉は、小林検事個人の威張り方であると同時に、検察組織の指揮命令が取調室まで流れ込んだ瞬間だったことになります。
上司の原稿を、部下が市民から回収する組織
検察の上司が事件の結論を決め、部下へ必要な供述を取るよう求める。
部下の検事は、参考人の説明が上司の筋書きと違えば、「本当にそれでよいのか」と問い直す。参考人が回答を変えなければ、今度は態度、正しさ、立場を問題にする。
それでも回答が変わらず、「原稿をください」と言われると、検事は返答に窮する。
なぜなら、原稿を実際に見せれば供述誘導が明らかになり、原稿は存在しないと答えれば、なぜ参考人の答えを認めなかったのかを説明できなくなるからです。
この構造が事実なら、検察組織は、上司が書いた事件の原稿を、部下の検事が取調室へ持ち込み、被疑者や参考人の口から読み上げさせる組立工場になっています。
現職検事の約4人に1人が、実際の供述とは異なる方向の調書作成を指示された経験を肯定したという数字は、その工場が一人の異常な検事だけで動いているのではない可能性を示しています。
小林検事は外へ圧力を流し、山口検事は内側で崩れ始めたのか
小林検事の言動と並べて考えるべきなのが、山口検事の不可解な面談です。
検察ユニオンに寄せられた情報によれば、金本重徳氏が黙秘へ転じた後、山口検事は土曜日に「雑談しに来た」と述べ、検察への印象や今後のことを尋ねたほか、「私のことは嫌いですか」と質問したとされています。
山口検事は、自分としては金本重徳氏を不利にしようとは思わず、フラットに対応し、可能な範囲で寄り添ってきたつもりであること、このような結果となったのは自分の力不足だったという趣旨も語ったとされています。
小林検事は、参考人へ「立場を考えろ」と圧力を向ける。
山口検事は、被疑者へ「私のことは嫌いですか」と理解を求める。
一方は上司から受けた圧力を外へ流し、もう一方は圧力を抱え込み、被疑者へ自分の気持ちを説明し始めたのでしょうか。
表面上は正反対に見える二人の言動が、実は同じ指揮命令系統から生まれた、異なる形のSOSだった可能性があります。
小林検事と山口検事から正式な通報があったわけではありません
小林検事及び山口検事本人から、検察ユニオンへ、上司によるパワーハラスメントや不当な捜査指示について正式な通報があった事実は、現時点で確認していません。
両検事が上司から特定の供述を取るよう命じられたことも、本記事で事実として断定するものではありません。
本記事が指摘しているのは、検察内部で実際に、上司から異なる方向の調書作成を指示された経験を約4人に1人が認めた調査結果があり、2026年にも、否認供述を得た検事が上司から罵倒されたとの告発が出ていることです。
その状況と、小林検事及び山口検事の不可解な言動を重ねたとき、両検事の背後に上司からの成果圧力がなかったかを調査する合理的な理由が生じます。
被害者である検事も、市民を威圧してよいことにはなりません
仮に小林検事と山口検事が、上司から罵倒され、事件の結論を押し付けられ、特定の供述を取るよう追い詰められていたのであれば、両検事はパワーハラスメントの被害者として保護されるべきです。
しかし、職場で被害者であることと、取調室で行った行為への責任は別です。
上司から「立場を考えろ」と言われたから、参考人へ同じ言葉を向けてよいことにはなりません。上司から事件の完成を求められたから、参考人の記憶を事件の原稿へ合わせてよいことにもなりません。
職場では弱い立場の部下であっても、参考人の前では国家権力を行使する検察官です。
同時に、担当検事だけへ責任を押し付け、事件の筋書きを作った上司を調査対象から外すことも許されません。
小林検事の威圧が本人の独断だったのか、上司が命じた供述獲得の方法だったのか。その双方を調べて初めて、個人の責任と組織の責任を分けることができます。
参考人取調べが録画されなければ、原稿を渡した者は見えません
被疑者取調べの一部が録音録画されるようになっても、参考人取調べが密室のまま残れば、供述誘導の場所が移動するだけです。
事件の故意、共謀、役割分担は、被疑者の自白だけでなく、複数の参考人供述を組み合わせて構築されることがあります。
参考人が何を話したのかだけでなく、検察官がどのような質問をし、どの回答へ不満を示し、どのような視線や語気で回答の変更を求めたのかを記録しなければなりません。
福岡県弁護士会は、2011年の時点で、供述と異なる方向の調書作成指示を認める意識調査結果を踏まえ、取調べ全過程の録音録画を求めていました。
福岡県弁護士会「今、改めて取調べの可視化を求める決議」を読む
15年以上前に示された問題を放置した結果、現在も「本当にその内容でよいのか」「立場を考えてものを言え」という取調べが行われている疑いが出ています。
横浜地方検察庁への公開質問
- 小林検事が参考人へ「あなたは立場を考えてものを言いなさいよ」と述べた事実はありますか。
- 小林検事が参考人らを睨むように見ながら、「本当にその態度と内容でよいのか」「正しいことなのか」と繰り返した事実はありますか。
- 小林検事が参考人へ求めていた具体的な回答は何であり、その方向は誰が決定しましたか。
- 小林検事に対し、金本重徳氏又は特定の人物に不利な供述を得るよう、上司から指示がありましたか。
- 参考人が「嘘を言えばよいのか。原稿をください」と応じた際、小林検事はどのように回答しましたか。
- 小林検事又は山口検事から、上司の暴言、成果要求、特定方向の調書作成指示その他のハラスメント相談はありませんでしたか。
- 参考人取調べの録音録画、取調べメモ、供述調書、捜査会議記録、メール及び上司への報告書を保全していますか。
- 小林検事個人だけでなく、取調べ方針を決めた上司と決裁者を含む、独立した第三者調査を受け入れますか。
小林検事と山口検事へ SOSなら参考人ではなく組織の外へ
小林検事、山口検事。
上司から、証拠と両立しない事件の物語を押し付けられていませんか。期待する供述を取れなければ、能力がない、事件を潰した、立場を分かっていないと評価される環境に置かれていませんか。
小林検事が参考人へ「立場を考えろ」と述べたのが、自分も上司から同じ圧力を受けていたためであるなら、その圧力をさらに弱い立場の市民へ流さないでください。
山口検事が「私のこと嫌いですか」と尋ねたのが、上司の命令と自分の良心の間で追い込まれていたためであるなら、身柄を拘束された被疑者へ理解を求めるのではなく、組織の外へ事実を伝えてください。
誰が事件の原稿を書いたのか。誰が特定の供述を取るよう命じたのか。誰が異なる供述や証拠を排除しようとしたのか。
それを証言することが、検察官としての本当のSOSです。
立場を考えるべきだったのは、参考人ではありません
小林検事は、参考人へ「あなたは立場を考えてものを言いなさいよ」と述べたとされています。
しかし、立場を考えるべきだったのは参考人ではありません。
参考人は、検察官の期待とは無関係に、自分の知っている事実を話す立場です。
小林検事は、国家権力を預かり、検察の見立てと異なる供述であっても正確に聞き、記録し、証拠と照合する立場です。
参考人を睨み、法的根拠を示さず、態度、正しさ、立場を問題にする。その振る舞いが事実であるならば、小林検事が参考人を評価する前に、一般の市民が小林検事を評価します。
そして、その評価が「法律家ではなく、権力を背にしたイキリチンピラのようだ」という厳しいものになったとしても、その原因は参考人が生意気だったからではありません。
検察官自身が、法律と証拠ではなく、立場と威圧を持ち出したからです。
小林検事個人の判断だったのであれば、その責任を説明してください。
上司の命令だったのであれば、誰が原稿を書き、誰がその原稿どおりの供述を取るよう命じたのかを明らかにしてください。
検察が本当に欲しいのが真実ではなく、上司が書いた原稿どおりの供述なのであれば、参考人を呼び出す必要はありません。
自分たちで書いた原稿を、自分たちで読み上げればよいのです。



