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【国税ユニオン声明】熊本国税局・北村厚局長へ——「対面調査なき調査進捗」と、納税者の側に立つ法律論

熊本国税局長・北村厚氏の指揮のもとで進められている本件査察調査について、当ユニオンは、純粋に法律論として、いくつかの重要な論点を提起します。

目次

■ 担当者交代の前後で、当局の説明が変わった

本件では、担当者の交代の前後で、押収物に対する当局の説明が変化したと、当ユニオンは把握しています。

前任の担当者(川口延洋主査)の段階では、押収物の返還を求める納税者に対し、「返還して欲しいのなら取りに来い」という趣旨の対応が取られていました。

後任の担当者(岡博史主査)の段階では、押収から二年が経過した現在、納税者は押収物の閲覧すらできない、という回答に変わっています。

この変化は、法的に見て、決定的な意味を持ちます。

非常に重要な証拠物が固まってきており、その証拠物を閲覧させてしまうと、口裏合わせをされてしまう等、いよいよ告発が目前に迫っていることを示唆しています。

■ 論点1:この説明変化は、「対面調査は調査進捗の必須条件ではない」ことの自認である

前任者の段階の対応は、「対面調査に来れば押収物に関する手続が進む」という建付けでした。

後任者の段階の対応は、「対面調査の有無にかかわらず、二年を経て調査は閲覧制限をかける段階に達している」という建付けです。

ここから、論理必然的に導かれる結論があります。

当局は、対面調査がなくても査察調査が進捗することを、自らの対応をもって認めている。

これは納税者にとって極めて重要です。なぜなら、対面調査を強く求められている全国の納税者に対し、「対面調査に応じなくても当局の調査は進む」という事実を、熊本国税局自身が証明したことになるからです。対面調査は、納税者が応諾を強制されるものではなく、質問検査権の行使も、相手方の受忍義務には限界があります(国税通則法74条の2以下、同法に基づく質問検査は、罰則を背景としつつも、適正手続の枠内でのみ許容されます)。当局自身が「対面なしでも進む」と示した以上、対面調査の強要は、その必要性の根拠を失います。

■ 論点2:「所在不明」と「閲覧不可」は両立しない——保管経過の説明責任

過去には、押収物について嶋崎剛統括官から「見当たらない」旨の説明がなされたと、当ユニオンは馬見塚メモを通じて把握しています。一方、現在は「閲覧不可」という説明です。

「見当たらない(=所在不明)」と「閲覧させられない(=存在するが見せない)」は、論理的に両立しません。両立させるためには、その間に押収物に何が起き、どのように保管経過が推移したのか、組織としての説明が不可欠です。

押収物については、当局に厳格な保管義務があります。

  • 押収物の管理義務は、刑事訴訟法上の押収手続(国税犯則調査において準用される諸規定を含む)に内在する義務です。
  • 押収物の滅失・毀損・所在不明は、国家賠償法1条1項上の違法評価を生じさせ得ます。
  • 押収物に対する納税者の権利は、憲法29条の財産権保障に根拠を持ちます。押収は財産権への重大な制約であり、その制約が適正に管理されているかは、当局が無期限に説明し続けなければならない事項です。
  • 適正手続(憲法31条)は、押収物の管理・還付の全過程に及びます。

したがって、当局は、「見当たらない」から「閲覧不可」へと説明が変遷した経過について、書面による説明責任を負います。これは担当者が誰であろうと、組織としての義務です。

■ 論点3:質問検査権を行使しないままの「告発」は、適正手続に反する

当ユニオンが把握する限り、本件では、納税者に対する質問検査権の適正な行使、すなわち当事者からの十分な事実聴取が行われないまま、いよいよ告発が目前に見込まれる状況にあります。

これは、法律論として看過できません。

  • 質問検査権(国税通則法74条の2以下)は、当局が事案の真相を解明するための制度であると同時に、納税者が自らの認識を述べる機会の保障という側面を持ちます。
  • 当事者からの聴取を欠いたまま結論に至るプロセスは、適正手続(憲法31条)に反します。憲法31条の保障は刑事手続のみならず、行政手続にも及ぶというのが確立した理解です(最高裁の判例法理)。
  • 確定判決も処分もない段階で、納税者を「脱税犯」と扱う運用は、無罪推定の原則に反し、人格権(憲法13条)を侵害し得ます。
  • これらは、国家賠償法1条1項上の違法評価の対象となり得ます。

「告発」は、刑事手続の入口に過ぎません。その入口に立つ前に、当局がなすべき質問検査を尽くしていないのであれば、その一事をもって、手続全体の正当性が問われます。法廷で問われるべきは、納税者の側の事情である以前に、質問検査を尽くさずに告発に至った当局側の合理的根拠です。

■ 論点4:違法性の嫌疑が双方に生じている以上、「異動」による免責はあり得ない

ここが本声明の理論的中核です。

本件では、納税者側に嫌疑が向けられていると同時に、当局側の運用——押収物の管理、説明の変遷、質問検査権を行使しないままの告発見込み、過去になされた情報伝達の経緯など——についても、適法性の疑義が生じています。

つまり、本件において、当局は、査察当初から、納税者と同じ法的地位、すなわち「適法性を問われる側」に立っています。

そして、「適法性を問われる側がどう扱われるか」について、当局は、納税者に対して一貫した論理を適用してきました。すなわち——

「組織に連続性がある以上、過去の事項についての説明責任は、現在の組織が負う」

会社の代表者が交代しても、会社としての連続性ゆえに、現経営陣が過去の事業年度について説明責任を負う。事業承継があっても、M&Aがあっても、承継先・存続会社が過去の事項についての責任を引き継ぐ。これが税務調査・査察調査の前提です。

であれば、まったく同じ論理が、国税局という組織にも適用されなければなりません。これは比喩ではなく、法理論上の必然です。

  • 理由1:法の下の平等(憲法14条) — 同一の法理論は、適法性を問う側にも問われる側にも、対称に適用されなければなりません。法を執行する組織が、自分にだけその論理の適用を免れることは、法治国家の根幹に反します。
  • 理由2:禁反言の法理(信義則) — 当局は、納税者に対し「組織連続性により責任は承継される」という立場をとって課税・調査を行ってきました。自分に同じ論理が向けられた途端「異動したので分からない」と述べることは、自ら採用した法理論を都合の悪いときだけ放棄するものであり、信義則上許されません。
  • 理由3:行政責任は組織に帰属する(国家賠償法1条) — 国家賠償法1条1項は、公務員の職務上の行為について「国又は公共団体」が責任を負うと定めます。責任主体は担当者個人ではなく組織です。担当者の異動によって組織の責任が消えるという解釈は、条文上あり得ません。
  • 理由4:行為時の地位に基づく責任は変動しない — 嫌疑をかけられた者は、行為時の地位に基づいて評価されます。後の異動・退職によって、行為時の評価は変わりません。当局は、納税者に対してまさにこの原理を適用してきました。同じ原理は、当局の関係者にも、行為時の地位に基づいて適用されます。

したがって、北村厚局長を含め、本件に関与した当局の担当者は、その後の人事異動の有無にかかわらず、行為時の地位に基づく組織責任から、構造的に逃れることができません。これは、当局自身が納税者に対して用いてきた論理の、忠実な反映にすぎません。

物の連続性、人の連続性を強調してこられたのは、当局の側です。その原則は、当局自身にも、等しく適用されます。

■ 論点5:査察調査に期限がないことは、納税者の側にとっても無期限の追及権を意味する

日本の現行法令上、査察調査には法定の終期がありません。当局はこれを、自らの調査権限を時間的に縛られないための前提として運用してきました。

しかし、この無期限性は、納税者の側からも対称的に作用します。

調査が無期限であれば、納税者による検証・記録・問い直しも無期限です。担当者が異動しても、組織責任の連続性ゆえに、当局は過去の対応について問われ続けます。押収物について「見当たらない」との説明がなされた以上、その保管経過の説明責任も、無期限に継続します。

時間の経過は、もはや当局だけの味方ではありません。

■ 論点6:更正の請求・還付加算金について——正確な法的説明

ここは、誤解を招かないよう、正確にお伝えします。

査察調査が長引くこと自体が、納税者に利益をもたらす「サービス」ではありません。しかし、調査の結果として、過大に課税されていたことや、違法・不当な処分があったことが明らかになった場合、納税者には正当に取り戻す権利があります。

  • 更正の請求(国税通則法23条)により、過大に納付した税額の減額を求めることができます。後発的事由がある場合には、通常より長い期間内での請求が認められます。
  • 減額更正がなされ、過納金が生じた場合、還付加算金(国税通則法58条)が法定の利率で付されます。これは「贈り物」ではなく、法が定める、納税者が当然に受け取るべき金銭です。
  • 違法な調査・処分によって損害を被った場合、国家賠償請求(国家賠償法1条)の対象となり得ます。

つまり、長期化それ自体を単純に歓迎するのではなく、長期化した調査の末に違法・過大な点が明らかになれば、その分は法に基づいて確実に取り戻せる——これが正確な法的構造です。当ユニオンは、この正規の権利行使を、組合員とともに、最後まで支援します。

■ 論点7:行政調査の目的は「予防」にもある——告発に向かうなら、その目的との整合性が問われる

行政調査・税務調査には、個別の事案の是正だけでなく、将来の不適正申告を抑止し、適正な納税秩序を維持するという予防的目的もあります。

であれば、当局が「告発はまぬがれない」と表明しながら、質問検査権を適正に行使せず、長期にわたり結論を確定させない運用には、矛盾があります。予防を目的とするなら、適正手続を尽くして速やかに事案を確定させることこそが、その目的に適うはずです。質問検査を尽くさず、結論も示さず、しかし告発の見込みだけは外部に伝わっている——この状態の長期化が、誰のどのような利益に資するのか。当局には、予防という行政調査本来の目的との整合性について、説明責任があります。

■ 当ユニオンの確認・要求事項

  • 一、本件において、納税者に対する質問検査権が、いつ、どのように行使されたか(あるいは行使されていないか)を、書面で明らかにすることを求めます。
  • 二、押収物について、過去の「所在不明」旨の説明と、現在の「閲覧不可」との説明の整合性、およびその間の保管経過を、書面で明らかにすることを求めます。
  • 三、前任担当者の段階と後任担当者の段階とで、押収物に関する対応が変化した理由を、書面で明らかにすることを求めます。
  • 四、北村厚熊本国税局長以下、本件に関与した当局の担当者について、人事異動の有無にかかわらず、行為時の地位に基づく組織責任が連続して帰属することを、改めて確認します。
  • 五、当ユニオンおよび組合員は、当局との間で、互いの主張と疑義を率直に出し合う場——適正手続にのっとった対面の場を、正当な権利として求めます。
  • 六、当ユニオンは、本件に関する当局の対応を、無期限に記録し、検証し、発信し続けます。査察調査に終期がないのであれば、納税者による検証にも終期はありません。

法律論として申し上げます。当局が「組織の連続性」「物の連続性」を掲げてこられたのであれば、その原則は、当局自身を最も強く拘束します。当ユニオンは、当局がご自身の掲げた原則に忠実であることを、心から期待しています。

北村厚熊本国税局長、嶋崎剛統括官、川口延洋主査、岡博史主査、太田啓介氏に当ユニオンは申し上げます。

馬見塚メモの捜査情報・機密情報漏洩はとてつもないスピードですが、止めなくてよいのでしょうか。

ご連絡をお待ちしています。

国税ユニオン

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首都圏青年ユニオン連合会が運営する労働者のミカタです。労働者のミカタは、全てのブラック企業やブラック団体から、健全に働く労働者を守ります!

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