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公益通報者保護法はなぜ機能しないのか|鳥取大学 補助金不正流用事件が示す報復と排除の実態|控訴審結審・判決7月29日

労働者のミカタは、国立大学法人鳥取大学における補助金不正流用に対する公益通報後、報復的なパワーハラスメント・雇止め等を受けたとする一審原告(以下「通報者A」)より、控訴審結審のご報告と、同じ立場の労働者への教訓を伝えてほしいとのご依頼をいただきました。

目次

控訴審の結審報告——判決は7月29日

通報者Aによれば、控訴審は、情報開示の命令もないまま、また一審判決が見落とした点についての新たな証拠を控訴審で提出したにもかかわらず一審原告への尋問も行われないまま、結審となりました。判決は令和8年7月29日に予定されており、判決後に弁護士同席のもとで記者発表を行う予定とのことです。

通報者Aは、裁判所が事実や真相追及を重視しないままで、事実に基づいた判決・判断を下せるのか、疑問と不安を感じていると述べています。

文書提出命令(情報開示)の申立てが認められなかった

通報者Aは、文書提出命令(情報開示を裁判所が命令するように求めるもの)の申立てを行っていましたが、裁判所はこれを認めませんでした。事実・真実に基づいた判決を下すためには、客観的な全ての証拠を裁判所が吟味する必要があると通報者Aは考えていますが、裁判所はそれを行いませんでした。

開示を求めていたのは、パワハラの事実・真相が一目瞭然となる、鳥取大学が保持している以下のような記録です。

  • 監視カメラの画像
  • 会議の録音記録
  • 鳥取大学の調査委員会が行った聞き取りの全て(鳥取大学は、実際に一審原告と同部屋であったり文部科学省事業を担当していた職員からの聞き取りは開示せず、主にパワハラをした教授らの聞き取りのみ開示しているとのことです)
  • 通報者Aが鳥取大学本学の総務課へ告発した後の、補助金不正についての鳥取大学による正式な聞き取りの録音記録(K理事と補助金不正の関わりを話し始めた途端に、S事務部長が通報者Aの話を中断させて別の関係のない質問をし始めた、とされる録音記録。3名が録音していたとのことです)

一審原告本人への尋問も認められなかった

通報者Aは一審原告への人証申立てを行っていましたが、裁判所はこれも認めませんでした。

一審判決では、パワハラと公益通報との関係を見落としていた点で不当であるとの理由で控訴し、控訴審ではそれをより明白に示す追加証拠を提出しています。一審判決は、10件のパワハラを個別のものとして判断するだけでした。しかし通報者Aによれば、パワハラは公益通報後に継続的に起こっており、かつ、鳥取大学本学へ告発した後から急激にひどくなっています。

例えば、一審判決で既に違法と認められている、一審原告とは業務上関係のない教授が、一審原告が断ったにもかかわらず直属の上司を介在して無理矢理飲食店へ誘い出し、5時間以上にわたって「上にあげると米子に住めなくなるぞ」と脅迫したのは、通報者Aが鳥取大学本学へ告発した直後のことでした。しかも、その教授は、補助金の不正流用を命じた当時の理事からの命令で通報者Aを呼び出したとされています。その後、業務をすべて中止させられ、配置転換などにあっています。

通報者Aは、これは単なるパワハラではなく、公益通報者への報復が背景・動機にあるパワハラとしか説明がつかないと主張しています。

通報者Aが伝えたい教訓

通報者Aは、自らのケースを、労働者や労働者を支援する方への教訓として生かしてほしいと述べています。

国立大学法人鳥取大学は公的機関であり、教育機関でもあり、鳥取大学医学部附属病院は医療機関です。つまり、税金で運営され、人材育成をし、人の健康や命のためにつくす立場にある機関です。にもかかわらず、通報者Aによれば、公益通報してから控訴審の結審に至るまで、最初から最後まで(裁判所に対してまで)事実でない証拠や主張をし続け、公益通報者である通報者Aの信用をなくさせるような人格攻撃が行われています。

前回の記事でもお伝えしたとおり、通報者Aが既に証拠提出し、大学自らのホームページで公開している規程さえ、「証拠提出していない」「存在しない」と裁判所に主張し、通報者Aを信用できない人間と印象づけようとした、というのが通報者Aの指摘です。

倫理観のある職員が排除された実態

通報者Aによれば、在職期間中に通報者Aと共に業務を行ったことのある人で、自ら退職を願い出て退職した人は一人もいません。にもかかわらず、鳥取大学は「通報者Aが原因で辞職した人がいる」と、何の証拠も提出せずに裁判書面で主張したとのことです(令和8年4月30日付の大学側書面に記載されており、通報者A側の代理人は名誉毀損での提訴も提案しているとのことです)。

通報者Aは、事実はその逆であると述べています。補助金不正流用で悩んでいた職員や、不正流用の常態化を認識しそれを良くないことと感じていた良識ある職員が、不正をした教授らからいわれなきいじめを受けたり、鳥取大学から雇用を打ち切られたりしている、というのが通報者Aの主張です。以下は、それを示す裁判所へ提出済みの証拠の一部です。

内視鏡専門職N氏の雇止め(甲第483号証)

甲第483号証によれば、内視鏡専門職のN氏は、次のように記しています(関係者氏名はイニシャルに置き換えています)。

私は、U教授が理解できた、許したわけではなく、お話のあと、U教授は病人としか見えなくなってしまった気がします。(中略)鳥大病院がつまらんです。それはわかっています。甲第483号証(内視鏡専門職N氏のメールより)

N氏は補助金不正流用に巻き込まれた当事者です。通報者Aによれば、N氏はU教授からの業務連絡はずしなどの嫌がらせにあった上に、雇い止めにあっています。U教授を「病人」、鳥取大学を「つまらん」とN氏に言わしめたのは、U教授が不正流用を継続し、N氏を業務から突然はずし、通報者Aへも多くのパワハラをするなど、倫理観を欠いたU教授や鳥取大学への失望の表れである、と通報者Aは説明しています。

知財プロデューサーK氏の雇止め(甲第484号証・甲第531号証)

同じU教授の言動に対して、知財プロデューサーのK氏は、甲第484号証において、U教授を万引きの犯人にたとえて次のように表現しています。

例えば、万引きの犯人に対して「あなた、万引きをやったでしょう。だめですよ。」と言うと、犯人にとっては、それが威嚇とも脅迫とも受け取られかねない面はあるものです。甲第484号証(知財プロデューサーK氏のメールより)

補助金の不正流用をした上に通報者Aへパワハラをした人物を「万引きの犯人」と例えたK氏もまた、鳥取大学と雇用契約の延長の約束があったにもかかわらず、正当な理由もなく雇用を打ち切られています。

このK氏は、通報者Aがあからさまなパワハラを受けるようになる直前、2015年8月に鳥取大学が補助金流用を改善するよう文部科学省から指摘を受けたにもかかわらず、不正流用隠しである出張報告書の書き換えを命じられた際には、甲第531号証において次のように述べていました。

ご指摘の通り、予算は流用することが当然になっていて、後でつじつま合わせをしているのが実態と推測致します。そのために、監査対策は重要項目なのだと思います。甲第531号証(知財プロデューサーK氏のメールより)

事実は「排除された側」にこそある

通報者Aは、次のように述べています。鳥取大学は、不正やパワハラを良くないことだと感じる倫理観のある人を徹底的に排除し、雇用打ち切りもした。一方で、通報者Aと業務上少しでも関係があった人で、在職中に自ら辞職した人は一人もいない。自ら辞職した人がいない以上、通報者Aが原因で辞職した人などいるはずがない。鳥取大学が雇用を打ち切ったのは、N氏とK氏である。にもかかわらず、鳥取大学は裁判所への提出書面に、証拠も具体的事実も全く示さぬまま、通報者Aが原因で辞職した人がいたと主張した——というものです。

補助金不正流用の規模と、責任者のその後

通報者Aによれば、このような理不尽がまかりとおり続けているのは、補助金の不正流用が当時の組織幹部(理事、病院長、副病院長〔現在は学長〕、センター長〔現在は学長特別補佐〕)らによって意図的に行われたためと考えられます。

実際に、鳥取大学は補助金の不正流用により、文部科学省へ7600万円を返金し、厚生労働省・AMEDへは400万円を返金しています。また、U教授はAMEDから不正認定を受けています。にもかかわらず、通報者Aによれば、補助金流用に責任のあった当時の副病院長は現在学長となり、不正認定を受けた教授(U教授)は学長特別補佐になっています。

公益通報を受けた文部科学省も厚生労働省も、通報者Aを守る措置は何もしてくれなかった、というのが通報者Aの述べる現実です。

公益通報者保護法・ハラスメント防止法の限界

通報者Aは、自らの経験から次のような教訓を導いています。

公益通報者保護法やハラスメント防止法は、組織の幹部が加害者・違法行為者である場合以外には有効なのかもしれません。しかし、組織幹部が不法行為やハラスメントを行った場合は、現実の社会で機能しないどころか、組織は事実でないことをねつ造してまで徹底的に公益通報者を痛めつける——これが私の裁判を通して言える教訓だと思います。

通報者Aは、兵庫県職員や和歌山市職員が自死せざるをえなかった理由のひとつもそこにあるのではないかと考えています。社会全体の利益のために不正を通報するという正しい行いをしても、逆に理不尽な攻撃を受けたとき、人は絶望的になり、命を絶つしか方法がないとまで追い込まれてしまう——通報者Aはそう指摘しています。

労働者・労働組合へのメッセージ

通報者Aは、労働者が不正をなくすことと自らの身を守ることを両立するため、戦略的に考え行動してほしいと願っています。具体的には、次のような点を念頭に置く必要があると述べています。

  • 職場の不正を知ったとき、自分の身を守ることと社会の利益のためにはどうしたらよいかを、戦略的に考えて行動する必要があること
  • 組織の公益通報窓口も、通報した省庁なども、守ってくれない場合があることを想定して動く必要があること
  • 裁判所も情報開示を重視せず、事実・真実に基づかないまま判決に至る可能性があること
  • こうした対策をとりつつも、真に公益通報者が守られるための法制度改革を国に求めていく必要があること

最後に、通報者Aは次のように結んでいます。

どうか、二度と自死する公益通報者が出ないよう、私のような被害にあう人が二度とでないよう、引き続きお力をお貸しくださいませ。

労働者のミカタは、本件のような公益通報後の不利益取扱い・パワハラ事案に関する情報提供・相談を引き続き受け付けるとともに、公益通報者保護法及びハラスメント防止法の実効的な改正に向けた取り組みを続けてまいります。

結びにかえて

本件は、税金で運営される公的機関・教育機関・医療機関において、補助金の不正流用に対する公益通報後、通報者本人だけでなく、不正に疑問を抱いた良識ある職員までもが排除・雇止めにあったとされる事案です。判決は令和8年7月29日に予定されています。組織の幹部自身が加害者である場合に、現行の公益通報者保護制度が実効的に機能するのか——本件は、その根本的な問いを社会に投げかけています。

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