完全無料で自己解決を目指せる新しいユニオン Free New Union

国立大学法人鳥取大学の公益通報後パワハラ・雇止め控訴審|内部調査の公正性と情報開示が争点|広島高裁松江支部

労働者のミカタは、国立大学法人鳥取大学における文部科学省関連補助金事業等に関する公益通報後の不利益取扱い及びパワーハラスメント等をめぐる民事訴訟について、一審原告(以下「通報者A」)より情報提供を受けました。本件は、単なる個別のハラスメント事案ではなく、公益通報後に組織的な不利益取扱いが行われたか、また大学内部調査が公正・中立に行われたか、事実に基づいた判断をするために情報開示がなされるかが主要争点となっている事案です。

本記事は、通報者Aご本人の同意のもと、個人情報のみを匿名化し、それ以外は裁判所に提出されている公開資料・公開情報に基づいて構成しています。

目次

控訴審 口頭弁論期日のお知らせ

  • 事件番号:令和7年(ネ)第40号 未払賃金等請求控訴事件
  • 期日:令和8(2026)年5月21日 午後1時30分から
  • 場所:広島高等裁判所 松江支部
  • 当事者:一審原告(通報者A) / 一審被告 国立大学法人鳥取大学

事案の概要

本件は、通報者Aが国立大学法人鳥取大学に在職中、文部科学省関連補助金事業等に関する公益通報を行ったところ、これに対して時間外労働賃金の不払い、パワーハラスメント、最終的には雇止めという一連の不利益取扱いを受けたとして、損害賠償等を求めている事案です。

一審においては、複数のパワーハラスメント行為が違法と認定されました。通報者A側は、これらの行為が単なる個別のパワハラではなく、補助金事業に関する公益通報後に行われた報復的対応であると主張しており、控訴審ではその点を含めた組織的責任が争点となっています。

本件の主な争点

① 公益通報後の不利益取扱いの有無

通報者A側は、本件で問題となっている複数のパワーハラスメント行為について、単なる個別のパワハラではなく、文部科学省関連補助金事業等に関する公益通報後に行われた報復的対応であると主張しています。

これに対し、一審被告鳥取大学側は、公益通報との関連性を否定しています。

② 大学内部調査の公平性・中立性

通報者A側は、鳥取大学ハラスメント調査委員会について、公益通報対象事案や医学部・医学部附属病院組織と人的・組織的に近接した関係者が多数含まれていた点を問題視しています。

特に、通報者A側は、鳥取大学におけるハラスメントの防止等に関する規程第13条第3項において、次のとおり定められているにもかかわらず、実際の委員構成等がこれに反していたと主張しています。

調査の公平性・中立性の観点から、当該事案の当事者との間に特別な利害関係がある者を指名することはできない。

https://www.tottori-u.ac.jp/kouhou/kisokusyuu/reiki_honbun/u095RG00000359.html

同規程は鳥取大学の公式ホームページ上で現在も公開されており、どなたでも閲覧することができます。

一方、鳥取大学側は令和8年4月30日付の準備書面において、次のように主張しています。

そのような利害関係にかかる制約はない。

鳥取大学側は、別規程(乙第60号証)を新たに提出した上で、上記の主張を行っています。

③ 情報開示の問題

通報者Aは、パワハラの証拠となる次のような、鳥取大学が保持する記録の開示を求めています。

  • 会議録音記録
  • 監視カメラ画像
  • 鳥取大学が通報者Aに対して行った不正に関する調査聞き取り録音記録
  • 鳥取大学が行ったハラスメント調査委員会の聞き取り記録

しかし、鳥取大学はこれらの開示を拒否しており、通報者Aは裁判所に対して文書提出命令の申立てを行いましたが、現時点では開示命令は出されていません。

通報者A側は、情報開示は、事実に基づいた適正な判断・判決のために必要不可欠であると主張しています。

今回特に注目すべき点——大学が自校の規程の存在を否定

本件において、今回の口頭弁論で特に注目される点は、鳥取大学側が令和8年4月30日付準備書面において以下のような主張を行っていることです。

  • 通報者Aが既に提出済みである規程について「証拠提出がない」と主張している点
  • 大学公式規程に存在する利害関係者排除規定の位置づけを否定している点
  • 通報者A側を「ストーリーを作り上げたい」などと表現している点

これらの主張について、通報者A側は、「大学側が提出済み証拠や自らの規程(鳥取大学の規程)との整合性を欠く主張を行っている」と問題提起しています。これは、「公益通報後に継続してきた組織防衛的対応の延長線上にある」と主張している象徴的事例の一つです。

鳥取大学の反論書面と既提出証拠との矛盾

通報者Aによれば、4月30日に鳥取大学が裁判所へ提出した書面は、通報者A自身が既に証拠提出した、鳥取大学のホームページでも閲覧できる大学の規則(調査委員会の委員が利害関係者であってはならないと記した規定)を存在しないとし、別の規定を裁判所へ証拠提出して、通報者Aを「ストーリーを作り上げ決めつける人物」として人格攻撃を行っている、というものです。

通報者Aは、調査委員に当事者の利害関係者を入れてはならないことは、社会通念上常識となっているにもかかわらず、それ自体をも否定している点において、公益通報者保護の観点からは、致命的、絶望的なものであると指摘しています。

しかも、それを行っているのは、国立大学法人という公的機関、教育機関であり、鳥取大学医学部附属病院という公的医療機関である点に、本件の深刻さがあります。

以下、令和8年4月30日付鳥取大学反論書面のうち、学内規定に関する部分を引用します。

一審原告が引用する「一審被告におけるハラスメント防止等に関する規定」について、何ら証拠提出がない。そして、乙第60号証によれば、そのような利害関係にかかる制約はない。利害関係については、無いか、有っても希薄であることが望ましいかもしれないが、基本的に、当該ハラスメント調査委員会は、一審被告内部のものであり、全くの利害関係がない者の選任というのは考え難い。この点、一審原告は、数名を挙げ、これについて「直接利害関係のあるメンバーから構成されていた」と述べるが、一審被告の内部者であることを述べるのみで、問題のある関係であることの言及はない(補助金不正に関連する、と主張するのかもしれないが、まったく一審原告の邪推に過ぎず、”補助金不正の隠蔽・報復ためのパワハラ”との、事実と異なるストーリーを作り上げたい一審原告の思い込みないし決めつけに過ぎない。)。なお、顧問弁護士事務所の野口弁護士にも「直接」の「利害関係」がある、と一審原告は主張するが、一審被告内部の委員会に顧問弁護士事務所に所属する弁護士が参加することを問題視するべき理由はない。

通報者A側の反論——事実は通報者Aは既に証拠提出済み

通報者Aは、甲第470号証の9頁から14頁のとおり、同規程を既に提出済みであるとしています。また、同規定は、鳥取大学公式ホームページで公開されているもので、同規程第13条第3項には次のように明記されています。

調査の公平性・中立性の観点から、当該事案の当事者との間に特別な利害関係がある者を指名することはできない。

大学側の主張は事実誤認と決めつけによるもの

通報者Aが本件で問題としているのは、規程第13条第4項に「調査委員会の委員には、学外者を加えることができる」とあり、文科事業で学長が申請者である以上、大学内部では利害関係の点からの公平性に疑義が生じる可能性が高いため、大学とは利害関係のない公正・中立な立場の学外者を委員に選定できたにもかかわらず、以下のような点で問題があったということです。

  • 文部科学省補助金事業との組織的一体性
  • 医学部附属病院内部における上下・同僚関係
  • 清水病院長、佐藤事務部長、植木教授、難波教授、古賀准教授との組織的近接性
  • 公益通報対象事案及びパワハラ事案との関係性
  • 組織防衛インセンティブを有する者が多数調査側に配置された点

本件調査委員会の構成について

公金流用のあった文部科学省補助金申請は、申請当初から目的外に流用することを前提として北野理事(申請当時は医学部附属病院長:甲530号証)の指示、指導の下、植木教授が主に提案し、一審被告学長名でなされた(甲526号証の3頁)ものでした。その内容は、一審被告医学部附属病院長が主導の下で、次世代高度医療推進センター(難波教授:初代センター長、植木教授:2代目センター長)内に、古賀准教授が部門長を務める産業化臨床研究部門を新設して遂行するとして申請されていました。

また、委員であった谷口准教授はこの申請計画にあるワークライフバランス支援センター担当者です(甲527号証の4頁)。本事業は医学部との共同事業でもあり(甲526号証の4頁から6頁)、この点で、ハラスメント調査委員会委員長の河合医学部長も事業遂行当事者でした。通報者Aが主張するハラスメント行為も、清水医学部附属病院病院長、附属病院次世代高度医療推進センター難波教授、植木教授、古賀准教授ら医学部附属病院関係者により行われたものです(実際に、一審で裁判所がパワハラ認定したものに、これらの全ての教授、准教授が加害者として関わっています)。

にもかかわらず、本件調査委員会には、以下の人物が含まれていました。

  • 河合医学部長(ハラスメント調査委員会委員長)
  • 岡田医学部副学部長
  • 原田医学部副病院長(現学長)
  • 谷口医学部附属病院准教授(補助金不正流用のあった文科事業のワークライフバランス支援センター担当)
  • 藤井医学部附属病院副看護部長
  • 野口医学部附属病院顧問弁護士事務所所属弁護士

これらの委員は、医学部・附属病院に所属し、通報者Aにパワハラの加害者として訴えられている人物と業務上密接な関係を有する者がほとんどでした。通報者Aは、この点について、一審被告鳥取大学の規程が要求する「公平性・中立性」の観点から重大な問題があると主張しています。

医学部附属病院顧問弁護士の参加について

一審被告は、「顧問弁護士事務所所属弁護士が参加することを問題視する理由はない」と主張しています。

しかし、顧問弁護士は通常、当該組織の利益擁護・法的リスク管理を職務とする立場にあります。そのため、本件のように、組織自体の対応や責任の有無が問題となる事案において、当該組織の顧問弁護士が調査側に参加することについては、少なくとも「公平性・中立性」の観点から慎重な検討が必要であり、通報者Aはこの点を問題としています。

本件の本質——大学内部者全員の排除を求めているのではない

通報者Aは、「大学内部者が一切参加してはならない」と主張しているものではありません。問題としているのは、同規定があるにもかかわらず、次のような者が公正であるべきはずの調査側に配置されていた点です。

  1. 公益通報対象事案及びパワハラ事案と組織的に近接する者
  2. 調査対象部署と人的・組織的関係を有する者
  3. 組織防衛上の利害を共有しうる者

このような構造は、公益通報者保護及びハラスメント調査制度の実効性に重大な疑問を生じさせるものであるからです。

調査委員会が看過した具体的事実

鳥取大学は、植木教授及び清水病院長による通報者Aへの対応について、パワーハラスメントには当たらないと結論づけています。しかし、乙32号証の8頁によれば、通報者Aは、会議等において報告を行った上で、上原准教授と共に田村農学部長との面談を行っており、その事実は議事録にも残されていました。

にもかかわらず、植木教授は、事実に基づかず、通報者Aが勝手に行動したかのように叱責し、清水病院長にも事実と異なる内容を報告しました。通報者Aは植木教授が事実を述べておらず、勝手に行動したことはない証拠の議事録、メール記録など多数の証拠を清水病院長へ提出しましたが、清水病院長はそれを確認せず、植木教授の言葉を信じたとして通報者Aを叱責しました。その結果、通報者Aは業務を全て取り上げられ、異動に至りました。

この点については、第一審判決においても、事実に基づかないものであり、著しく不当であるとして、不法行為として認定されています(判決文27頁)。

しかし、被告ハラスメント調査委員会は、この不当行為を把握していたにもかかわらず、植木教授、清水病院長からの「パワハラはなかった」との言い分に基づき、パワハラはなかったと結論づけています。

公益通報後の一連の不利益取扱いとの連続性

更に重要なのは、通報者Aが、既に甲第470号証9頁から14頁として当該規程を提出済みで、同規程は、一審被告自身が鳥取大学公式ホームページ上に掲載し公表し、第13条第3項には明文規定が存在するにもかかわらず、一審被告が、「何ら証拠提出がない」と主張した上、乙第60号証を引用して、「そのような利害関係にかかる制約はない」とまで主張したことです。

本件において問題となっているのは、通報者Aによる文部科学省、厚生労働省、AMED補助金事業に関する公益通報及び、それに関連する組織的対応の当否です。このような事案において、一審被告が、自ら制定・公表し、かつ通報者Aが既に提出済みである規程の存在自体を否定するかのような主張を行っていることは、単なる誤解や見落としでは説明し難い不自然さを有しています。

さらに、一審被告は、当該規程の存在を前提として委員構成の公平性・中立性が問題とされているにもかかわらず、その規程自体の存在を矮小化し、別規程を引用することによって論点をずらしています。

このような主張態度は、本件公益通報に関連する組織的問題及び調査の公正性に関する実質的検討を回避しようとする組織防衛的対応をうかがわせるものであり、公益通報後に通報者Aに対して行われた一連の不利益取扱い・調査拒否等とも連続性を有するものといえます。

本件の社会的意義——公益通報者保護制度の実効性が問われている

本件は、公益通報者保護制度の実効性、大学等公的機関における内部調査の独立性、公正性の在り方に関わる問題を含んでいます。

特に、次のような問題は、全国的にも重要な論点であると考えられます。

  • 組織内部者のみで構成された調査委員会の限界
  • 公益通報後の不利益取扱いの立証困難性
  • 情報開示拒否と証拠偏在の問題

また、公益通報後の不利益取扱いが「組織内部調査」によって否定される構造や、証拠・情報が組織側に偏在している中で通報者側が立証を迫られる構造は、全国の大学・公的機関にも共通しうる問題です。兵庫県、和歌山市など他の事例からも全国的に同じような事象が起こっていると考えられ、情報開示、公益通報者保護、裁判の公平性、告発者への報復という観点からも、本件は重要な示唆を与える事案です。

改正公益通報者保護法・ハラスメント防止法の見直しの必要性

通報者Aは次のように述べています。

国立大学法人鳥取大学のような公的機関が以上のように、情報非開示を続け、裁判前から裁判後、マスコミ報道後の現在ですら事実でない証拠と称する事実・真実に反するものを裁判所に提出し、公益通報者への人格攻撃を継続している点で、12月施行予定の改正公益通報者保護法やハラスメント防止法の見直し、改善が必要であることを示していると思います。

裁判所に事実でない証拠を証拠として出して、一審原告(通報者A)を攻撃することは、内部告発してから現在に至るまで継続的にあり、鳥取大学が提出した裁判書面がその証拠で、この証拠は数えきれないほどあるとのことです。この事例から、改正公益通報者保護法では通報者を守りきれず、法制度改革の必要性があることが示唆されます。

労働組合・労働者支援団体への呼びかけ

通報者Aからは、労働者を支援する労働組合に対し、次のような呼びかけがありました。

労働者を支援する労働組合の皆さまに、その先頭となって法改正を国に要請すると同時に、私と同じような被害者が二度と出ないように引き続き労働者への啓発と相談を行って頂ければ幸いです。

労働者のミカタは、本件のような公益通報後の不利益取扱い・パワハラ事案に関する情報提供、相談を引き続き受け付けています。

関連資料・参考リンク

本記事に関連する裁判所提出書面・公開資料は以下のとおりです。いずれも松江市にある広島高等裁判所松江支部に行けば閲覧できる公開資料です。

鳥取大学公式規程(公開ホームページ)

結びにかえて

本件は、国立大学法人という公的機関、教育機関、医学部附属病院という公的医療機関で、公益通報後10年以上にわたり通報者への不利益取扱いと人格攻撃が継続している事案です。労働者のミカタは、本件のような事案が二度と起こらないよう、引き続き労働者・通報者への支援と、公益通報者保護法及びハラスメント防止法の実効的な改正に向けた取り組みを続けてまいります。

令和8年5月21日の広島高等裁判所松江支部における口頭弁論にも、多くの方が関心を持って傍聴されることが期待されます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

首都圏青年ユニオン連合会が運営する労働者のミカタです。労働者のミカタは、全てのブラック企業やブラック団体から、健全に働く労働者を守ります!

主要リンク一覧

コメント

コメントする

目次