完全無料で自己解決を目指せる新しいユニオン Free New Union

株式会社ストロベリーコーンズ(ナポリの窯)「徹底抗戦」声明を法的に検証

目次

労基署指導票・社内メールが示す紛れもない事実

ピザ店「ナポリの窯」を運営する株式会社ストロベリーコーンズ(代表取締役 木野将徳)は、ナポリの窯ユニオン結成を受けて自社サイトで「徹底抗戦」する旨の声明を出した。

参考:株式会社ストロベリーコーンズ公式サイトの声明

しかし当組合(首都圏青年ユニオン連合会/グローバルユニオン傘下)が確認した札幌中央労働基準監督署の指導票、および同社の社内メールは、声明の内容と著しく食い違うものである。本記事では、これらの一次資料を示しつつ、同社声明の法的問題点を整理する。

1.札幌中央労働基準監督署が3店舗に同時指導 ― 違法状態は「疑い」ではなく「指摘済み」

まず確認すべきは、本件は労働組合と会社の単なる主張の応酬ではなく、国家機関である労働基準監督署が正式に指導書を交付しているという事実である。

画像1(円山店)、画像2(行啓通店)、画像3(麻生店)は、令和7年(2025年)10月23日付で札幌中央労働基準監督署が交付した「指導票」(様式第8号の2)である。3店舗すべてに対し、同日付・同内容で指導が行われている。

指導票に記載された指導事項は次の3点である。

(1)休憩について(労働基準法第34条関連)

指導票には、

タイムカード表及び労働者へのヒアリングの結果から、パートタイム労働者以外の労働者について、日ごとの休憩時間ではなく、1週間及び1か月間で取得した休憩時間を平均して日々の休憩時間を申告していた実態が疑われます。

と記載されている。労基法第34条は、6時間を超える労働で45分以上、8時間を超える労働で1時間以上の休憩を「日ごと」に与えなければならないと定めている。「平均して申告」では当然これを満たさない日が生じる。

(2)労働時間の適正な把握について

指導票には、

貴事業場では、ICカードを打刻する方法により、労働時間を適正に把握することになっています。しかしながら、打刻漏れが散見されるため、打刻を徹底し、適正に労働時間を把握するようにしてください。

と記載されている。これは厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に直接抵触するものである。

(3)過去3か月(令和7年6月1日以降)に遡及した補正報告の指示

過去に遡って労働時間および休憩時間の補正が必要となった場合は、その内容を含めて令和7年12月10日までに報告することが求められている。

つまり、労働者ではなく労基署自身が、ストロベリーコーンズに対し未払い賃金の発生可能性を含む補正を命じているのである。これを「労働組合のいいがかり」で済ますことは、もはや事実上不可能だ。

2.社内メールが「タイムカード改ざん」の実態を自認している

さらに重大なのは、ストロベリーコーンズの社内メールの内容である。これは会社が自社の管理職向けに送信した内部文書であり、「外部団体」からは見えない類のエビデンスと言える。

2025年10月29日付メール「正しいタイムカード打刻について」

このメール本文には、以下のような記述がある(要旨)。

  • 今年4月、円山店に労働基準監督署の抜き打ち調査があった
  • その後、管轄3店舗(円山・行啓通・麻生)に調査が拡大された
  • 12月に改善報告が必要で、「いまだ継続中の案件」である
  • 「労基に指摘された問題は札幌に限ったことではないので、全国直営店に共有し、正しい勤怠管理ができるように致しましょう」

そのうえで、会社自身が以下のような問題点を列挙している

【問題点】

  1. タイムカードが正しく打刻されていない
    • 後日まとめ打ちした形跡がある
    • 出退勤時刻が毎日同じ、11:00~22:00 等
    • 休憩時間が長い、11:00~22:00の勤務中7~8時間 等
  2. 有給休暇が消化されていない

11時から22時まで11時間勤務の中で「休憩7~8時間」と申告されていた、という記述を会社自身が書いているのである。常識的に考えて、ピザ店の現場で休憩7~8時間が実態のはずがない。これは事実上の労働時間圧縮であり、未払い賃金問題に直結する。

2025年11月1日付追加メール ―「二つの法律違反にあたる可能性」を社内で警告

3日後、同じ中村氏は追加メールを発信している。社員から、

「社員シフトで休み希望を8日で出したところ、公休7日・有給1日に上司に勝手に変えられた」

との通報が会社にあったとし、その上で次のように述べている。

本人の同意なき勝手な改ざんは、厳密に言うと二つの法律違反にあたる可能性がありますので以後絶対に行なわないでください!

そして社内向けに、以下の法的リスクを明記している。

  • 労働基準法第39条違反:有給休暇を会社又は上司が勝手に使うことは、「6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」の罰則が、会社・上司に科される可能性
  • 刑法第159条違反(私文書偽造罪):会社(または上司)が、労働者の承諾なく勝手に労働者名義の有給休暇申請書を作成・提出した場合、私文書偽造罪に該当し「3ヶ月以上5年以下の拘禁刑」が科せられる可能性

繰り返すが、これは会社の管理職が会社内部で発信したメールである。会社自身が「自社の上司が私文書偽造に該当する可能性のある行為をしている」と認識し、警告を発しているのだ。

3.「外部団体」というレッテル貼りは法的に二重に誤っている

ここから、会社声明への直接的な反論に入る。

会社は声明において、ナポリの窯ユニオンを「外部団体」と位置付けているように読める表現を用いている。しかし、これには二つの致命的な法的誤りがある。

(1)「内部の話を知っているのは社員以外あり得ない」という思考自体が違法な犯人探しに繋がる

そもそも前述の社内メールや指導票の内容は、当該事業場の従業員でなければ知りえない情報を多く含む。これを根拠に「だから外部団体ではなく社員からの情報提供を受けたユニオンに違いない」と決めつけ、情報提供者を特定しようとする動きは、まさに公益通報者保護法が禁止する「通報者探し」そのものである。

最近では、兵庫県知事をめぐる一連の問題において、公益内部通報者として保護されるべき職員が、組織側の犯人探しの中で自死に追い込まれたとされる事案が大きく報じられた。本件における会社の姿勢は、構造的にこれと同種の問題をはらんでいる。

そもそも、ことの発端は労基署の臨検が入るほどの労務管理不全である。最初に問題行為をしたのは会社側であり、それに対し労働者が声を上げることは正当な権利の行使である。情報源を特定して圧力をかけようとする発想自体が、ブラック企業体質の表れと言わざるを得ない。

(2)労働組合は憲法上の権利であり、「外部か内部か」「労組法上の労組か否か」は関係ない

法的にさらに重要なのはこの点である。

日本国憲法第28条は、

  • 団結権
  • 団体交渉権
  • 団体行動権(争議権)

の労働三権を、すべての勤労者に保障している。これは憲法上の人権である。

そして団結権の主体は、

  • 単一企業の正社員のみで構成される企業内組合
  • 業種・地域横断のいわゆる合同労組(ユニオン)
  • 産業別労働組合
  • 上部団体(連合会・全国組織)

など、組織形態を問わず保障される。「外部団体」だから対応しない、という理屈は憲法違反である。

加えて、労働組合法上の「労働組合」の要件(自主性、民主性等)は、不当労働行為救済制度などを利用するための要件にすぎず、団体交渉に応じる義務の存否を決める基準ではない。労組法上の労組であろうとなかろうと、憲法上の労働組合である限り、団体交渉の申入れに対して使用者は誠実に対応する義務を負う。

会社が「徹底抗戦」と称して団体交渉を拒否したり、組合を「外部団体」と切り捨てたりする態度は、

  • 労働組合法第7条(不当労働行為)違反の疑い
  • 民事上の団交応諾義務違反

に該当しうる行為である。

4.これは一企業の問題ではなく、社会問題である

整理すると、本件は次のような構造を持っている。

  1. ピザ店の現場で、休憩7~8時間と記録される異常な打刻運用が長期間放置された
  2. 労基署の臨検により3店舗で違法状態が指摘され、過去3か月分の補正報告まで命じられた
  3. 会社の管理職自身が社内メールで「私文書偽造罪に該当する可能性」を警告しなければならない状態だった
  4. 労働者が労働組合を結成し是正を求めたところ、会社は「外部団体」扱いし「徹底抗戦」を表明している

これは典型的なブラック企業の対応パターンであり、近年問題視されている、通報者・声を上げた労働者を圧迫する組織風土の問題そのものである。

声を上げる側を悪者にしたところで、労基署が交付した指導票も、会社自身が発信した社内メールも、消えるわけではない。

5.親会社エックスモバイルをめぐる過去の報道

本件をより広い文脈で見るうえでは、親会社であるエックスモバイル株式会社についての過去の報道にも触れておくべきである。

月刊誌『FACTA』2021年9月号は、「Ponzi Scheme(自転車操業)」というシリーズの中で、「格安携帯エックスモバイル『怪しい提案』商法」と題した記事を掲載している。

同記事では、WiFiレンタル事業に関する「STRICTLY CONFIDENTIAL」と記載されたパワーポイント資料を入手したとされ、端末の販売預託商法的なスキームや、過去に大規模被害となった類似事案(ジャパンライフ事件、豊田商事事件、安愚楽牧場事件等)との構造的類似性が指摘されている。

これは当組合の見解ではなく、商業誌に掲載された第三者メディアによる報道である。事実関係の最終的な評価は読者および当局に委ねられるべきだが、親会社の事業手法そのものに対しても、報道機関から公然と疑問が呈されてきた経緯があることは、本件の背景として無視できない。

6.組合員から寄せられている声

ナポリの窯ユニオンの組合員からは、次のような声も寄せられている(一例)。

エックスモバイルが株主になってから見事にトラブルの連続で、結局怪しい太洋物産に転売、あからさまな、転売目的の乗っ取り。悲しいです。

これは現場で長年働いてきた一労働者の主観的な印象であり、当組合としてもこの記述に含まれる事実関係の検証は今後の課題としている。しかし、長年勤務してきた現場労働者にここまでの不信感を抱かせている経営状況そのものが、強く問題視されるべきである。

なお当組合では、前述の端末の販売預託商法的なスキームについてはもちろん、資本関係の変動や下請取引の実態についても、必要に応じて下請代金支払遅延等防止法(下請法)等の観点から問題がないかを継続的に確認していく方針である。

7.会社に求めること

以上を踏まえ、当組合およびグループ組合であるナポリの窯ユニオンは、株式会社ストロベリーコーンズおよび親会社エックスモバイル株式会社に対し、改めて次の点を求める。

  1. 「外部団体」「徹底抗戦」といった対決姿勢を撤回し、ナポリの窯ユニオンを憲法上の労働組合として認識し、誠実に向き合うこと
  2. 札幌中央労働基準監督署からの指導事項について、令和8年7月末までの期限を遵守し、過去3か年分の労働時間・休憩時間の遡及補正と、未払い賃金の精算を完全に行うこと
  3. 札幌3店舗にとどまらず、社内メールでも認められているとおり、全国直営店における勤怠管理の総点検を行うこと
  4. 公益通報者・組合員に対する不利益取扱い、および情報提供者の犯人探しを一切行わないこと
  5. 親会社エックスモバイルとの取引・資本関係について、コンプライアンス上の説明責任を果たすこと

11月1日付の社内メールで、会社の管理職自身がこう述べている。

くれぐれも上司上長が改ざんすることのないようにお願い致します。

重要なのは法律を守ることです。

会社が自分自身で書いたこの言葉を、会社自身が実践することを、強く求める。

関連リンク

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

首都圏青年ユニオン連合会が運営する労働者のミカタです。労働者のミカタは、全てのブラック企業やブラック団体から、健全に働く労働者を守ります!

主要リンク一覧

コメント

コメントする

目次