厚生労働省では、労働者に発症した上肢障害を労災として認定する際の基準として「上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準」を定めています。
「上肢障害」とは、腕や手を過度に使用すると、首から肩、腕、手、指にかけて炎症を起こしたり、関節や腱に異常をきたしたりすることがあります。上肢障害とはこれらの炎症や異常をきたした状態を指します。
労災と認定されるためには、次の3つの要件すべてを満たす必要があります。
①上肢等に負担のかかる作業を主とする業務に相当期間従事した後に発症したものであること。
※上肢等とは、後頭部、頸部、肩甲帯、上腕、前腕、手、指をいいます。
②発症前に過重な業務に就労したこと。
③過重な業務への就労と発症までの経過が医学上妥当なものと認められること。
上肢等に負担のかかる作業には、さまざまなものがありますが、主に次のような作業が該当します。
①上肢の反復動作の多い作業
◆キーボード入力をする作業
◆運搬・積み込み・積み卸し、
◆製造業における機器などの組立て・仕上げ作業調理作業、手作り製パン、製菓作業、ミシン縫製、アイロンがけ、手話通訳
②上肢を上げた状態で行う作業
◆天井など上方を対象とする作業
◆流れ作業による塗装、溶接作業
③頸部、肩の動きが少なく姿勢が拘束される作業
◆顕微鏡やルーペを使った検査作業
④上肢等の特定の部位に負担のかかる状態で行う作業
◆保育・看護・介護作業
「相当期間従事した」とは原則として6か月以上従事した場合をいいます。
「過重な業務に就労した」とは発症直前3か月間に、上肢等に負担のかかる作業を次のような状況で行った場合をいいます。
業務量がほぼ一定している場合、同種の労働者よりも10%以上業務量が多い日が3か月程度続いた場合などを指します。
また、業務量にばらつきがあるような場合は、
① 1日の業務量が通常より20%以上多い日が、1か月に10日程度あり、それが3か月程度続いた(1か月間の業務量の総量が通常と同じでもよい)場合
② 1日の労働時間の3分の1程度の時間に行う業務量が通常より20%以上多い日が、1か月に10日程度あり、それが3か月程度続いた(1日の平均では通常と同じでもよい)場合
が当てはまります。
上肢障害の代表的な診断名には、次のようなものがあります。
【上腕骨外(内)上顆炎、手関節炎、書痙、肘部管症候群、腱鞘炎、回外(内)筋症候群、手根管症候群】
労災については、企業側も労災隠しなどを行いがちです。
労災を使うかどうかは自由ですが、受給するか否かにかかわらず労働災害が発生したことを労働基準監督署に報告する義務はあります。
この届け出を怠るのは、「労災隠し」という犯罪行為に該当してしまうので注意が必要です。
医療機関としても、犯罪行為に加担をしないように気を付ける必要があります。