タイミーの前払いサービスは「貸付」として貸金業法の規制を受けないのか
株式会社タイミー(Timee)のタイミーは、労働者と企業をマッチングするアプリとして非常に高い知名度を誇っていますが、労働者とは直接の雇用契約を結ばず、労働者は企業とのみ雇用契約を結び、あくまでもタイミーは労働者への賃金の支払いを立て替えて前払いしているだけだ、という主張をしているため、この前払いは、労働者に対する貸付であり、だとすれば貸金業法によって様々な規制を受けなければならないサービスではないか、という点が容易に議論になりそうです。
この点、タイミー自体も理解しているようで、グレーゾーン解消制度を活用する事で、自身のサービスの合法性を主張しています。
タイミーとグレーゾン解消制度については、下記の記事前半で詳しく説明してますので参考にして下さい。
タイミーが「貸付」に該当しないと判断したグレーゾーン解消制度の回答
まずはタイミーが2018年12月20日に獲得した貸金業法第2条第1項に規定する貸金業に該当するかについての回答書をご覧ください。
一見すると、企業とは業務委託契約を締結し労働者の賃金相当額・手数料・業務委託費を徴収し、労働者には利用規約への同意をさせる事で労働者の賃金を立替払いするという、名目を回りくどく巧みに利用したタイミーのサービスを、一つずつロジカルに法解釈しており、なるほど、タイミーのサービスは合法なのだな、という印象を強く与える回答書に見えます。
しかし、この回答書をよく確認すると回答者である行政は、
回答書
- 貸金業法上の「貸付け」の該当性については、経済的側面や実態に照らして判断している。
- 本照会に対する判断については、次のとおりであるが、照会書で確認できる事実内容を前提としており、その内容に変更がある場合、又は新たな事実がある場合には、判断が変わる可能性がある。
- 当該事業者の従業員への前払いは、労働基準法第11条に規定する賃金の支払いに該当することを前提とするが、当該事業者及び導入企業は、本サービスの提供を開始するにあたっては、賃金支払いの該当性を労働基準法の所管当局にあらかじめ確認する必要がある。
- 仮に契約形態が委任契約であっても、実質的に「貸付け」行為に該当し、貸金業に該当すると整理すべき場合もある
- との前提の下では、導入企業又は従業員に対する信用供与とは言えず
- 上記前提と相違し、実質的には貸付けを行っていると認められる場合には、導入企業又は従業員に対する金銭の貸付けに該当し、貸金業法第2条第1項に規定する貸金業に該当する可能性が高いと考えられる。
この2ページちょっとしかない回答書に、これだけの但し書きと共に、グレーゾーン解消制度は照会者であるタイミーが行政へ提供した情報が正しいという前提で判断しており、実質的に実態が異なっていた場合は回答書の判断は変化する、という立場であると繰り返し強調しています。
そしてタイミーが照会の際に行政に提供した情報は下記から分かる通り、
4. 確認の求めの内容
当該事業者の従業員に対する前払いが、労働基準法第11条に規定する賃金の支払いに該当する場合、当該事業者の行為は、貸金業法第2条第1項に規定する貸金業に該当するか。
回答書
労働基準法で規定される賃金を規定通りしっかり支払っているというのであれば、という前提に立っており、行政もこれを大前提として、タイミーの労働者への立替払いは貸金業法上の「貸付」ではない、と回答しているにすぎないのです。
言い換えれば、そもそもタイミーが労働基準法に違反していた場合については一切の判断をしていない、という事です。
タイミーは「実質的に実態を見て」本当に貸付業者ではないのか?
この点について、そもそもタイミーは労働基準法に違反しているという強い疑いを当組合は指摘していますので、こちらの記事の後半部分をご確認ください。
このように、仮に労働者が30万円の賃金を受け取っていたとしても、タイミーはその30%にあたる9万円を企業から徴収しているため、本来は39万円の賃金が貰えるはずであった労働者は、タイミーが立替払い・前払いを行うことによって、30万円しか貰えていない、という事です。
タイミーの立替払い・前払いサービスの実態は給与ファクタリングではないか?
さて、給料を受ける権利を労働者が実際の給料額よりも低額で業者に債権譲渡し、給料受け取り後に額面通り買い戻す、給与ファクタリングと言われるサービスがあります。
この給与ファクタリングは、高金利の貸付を行う闇金業者などの存在が裏で横行している社会問題もあり、金融庁のHPでも強く注意喚起がなされていますが、いよいよ令和5年2月20日の刑事事件の最高裁判例で、「貸付」に該当するという判断がなされる事態になりました。
タイミーの、本来は39万円である賃金を、労働者に30万円だけ支払い、企業から39万円を徴収する、この立替払い・前払いサービスの実態は、給与ファクタリングとあまりにも酷似していないでしょうか?
実態通り給与ファクタリングとみなされる事になれば、タイミーのサービスは貸金業法上の「貸付」となり、タイミーは貸金業者としての法規制を受ける必要があります。
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