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タイミーに対する東証の回答から浮かび上がる形式的審査の問題

目次

労働者を守るために問われるべきタイミーのビジネスモデルの適法性

タイミー社のビジネスモデルに関して、当組合はその適法性について具体的な指摘を行い、東京証券取引所(以下、東証)に上場審査の過程でどのように対応したのかを問うたところ、「個別の照会については回答しかねます」との返答を受けました。この回答から浮かび上がるのは、東証の審査がいかに形式的であり、上場後の社会的影響について東証自身が責任を負う意思がないという実態です。

本記事では、労働者にとって重大な影響を与え得るビジネスモデルが適法性の検証を回避したまま上場を果たす可能性の問題点を掘り下げます。そして、東証が形式的審査に終始することで、実際に被害を受ける労働者がどのようなリスクにさらされるのかを明らかにします。

東証への質問と回答の全文は記事の最後に記載してあります

東証の「回答しかねます」という姿勢が示すもの

東証の上場審査には、形式的な基準に適合しているかを確認する役割があるものの、その審査が社会的影響や法的リスクを十分に検証しているわけではない点が見過ごされがちです。今回のように、「個別の照会に回答しかねる」とする対応は、審査内容を具体的に説明しないことで、事実上その責任を企業側に転嫁する姿勢を示しています。

つまり、上場後に発生する問題については「東証は責任を負わない」という立場を暗に認めているのです。これは、労働者や社会に対する不利益が生じた際、東証の審査プロセスの不備が追及される可能性を回避するための予防線とも考えられます。

タイミー社のビジネスモデルと労働者保護の視点

タイミーのビジネスモデルは、短期的かつ柔軟な働き方を提供する一方で、労働者が労働基準法や社会保険制度の保護を十分に受けられない可能性がある点で議論を呼んでいます。これが適法性の観点から問題となる場合、労働者に最終的な負担が押し付けられることになります。

特に、下記のような問題が考えられます。

労働基準法違反の可能性

タイミーの業務形態は、副業社の労働時間を全く通算していないため、雇用契約ではなく請負契約や委託契約として扱われる場合、最低賃金や残業代の支払い義務が曖昧になる可能性があります。

社会保険制度の未適用

前述の通り、副業者の労働時間の通算がなされていないため、労働者が被保険者として登録されない場合、年金や健康保険、労災保険の対象外となり、事故や疾病の際に十分な保障を受けられません。

実態としての雇用関係の潜脱

実質的に労働者が指揮命令下にある場合でも、労働時間を通算していないことから、形式上は独立した事業者とされることで、企業側が雇用者としての責任を回避する仕組みが問題視されます。

東証の形式的審査が労働者に与える影響

東証がこれらの問題を十分に検証しないまま上場を許可した場合、以下のようなリスクが考えられます。

労働者の権利侵害の放置

上場により企業の知名度が上がり、労働者が不利益を被っても、企業の正当性が誤って認識される可能性があります。

社会的信用の失墜

上場企業としての信用を背景に、問題点を指摘する声がかき消される可能性があります。
これにより、労働者は不当な扱いを受けた場合でも泣き寝入りを余儀なくされるでしょう。

労働市場の悪化

適法性に疑問が残るビジネスモデルが広がることで、労働市場全体の規範が崩れ、他の企業も同様の手法を採用する悪循環が生まれかねません。

タイミー社に責任追及を

東証の形式的審査は、タイミーのビジネスモデルを「適法である」と保証するものではありません。
むしろ、東証の回答からは「上場後に問題が生じた場合は、当事者間で解決してください」との立場が明確に示されています。

したがって、労働者が守られるためには、タイミー社自身が法的責任を果たすよう追及し続ける必要があります。そのためには、問題が発覚した際に法令違反を具体的に指摘し、労働者自身が声を上げることが重要です。

形式的審査の限界を超えて

労働者の権利保護を目的とする法制度がある以上、それを潜脱するビジネスモデルが安易に上場を果たすべきではありません。東証の審査が形式的である以上、最前線でリスクを負う労働者自身が声を上げ、適法性を社会的に問うべきです。

東京証券取引所への質問と回答の全文

当組合からの質問①(2024/12/25)

東京証券取引所 御中

前略

貴所が上場審査を行ったタイミー株式会社に関し、同社の事業運営および労働基準法に基づく法令遵守状況に関して、以下の点についてご回答をお願い申し上げます。本質問書は、同社が抱える未払い賃金問題や法令違反の疑いが、審査過程でどのように取り扱われたのかを明確にするためのものです。

0. 副業者の副業先の就労に関する未払い賃金の問題

副業者の場合、通算した労働時間が法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた場合には、法律上、割増賃金(残業代)の支払いが必要となります。

そのため、現行法の下ではダブルワークを公然と認めた場合、企業において副業に従事している労働者の労働時間を厳格に管理しなければならないことになります。

そのため、現行法のルールは副業に向かないルールといえますが、この点に対して、どのような措置を講じましたか?

下記全ての質問に対しての前提として非常に重要な質問となりますので慎重にご回答ください。

1. 上場審査における未払い賃金問題の扱い

1.1 労働基準法遵守状況の確認

タイミー株式会社が上場審査を受けた際、同社の未払い賃金問題(時間外労働や深夜労働に対する割増賃金の不払い)が審査項目として取り上げられたかをご教示ください。

未払い賃金問題が審査過程で把握されていた場合、それをどのように評価し、上場可否の判断に反映したのか、具体的なプロセスを示してください。

1.2 付加金支払い義務の認識

労働基準法第114条に基づく付加金の支払い義務がある可能性について、貴所としてどの程度認識していたかをご説明ください。

2. 労働時間管理および労働環境の評価

審査の一環として、タイミー株式会社のプラットフォームにおける労働時間管理の仕組みや、労働者の権利保護に関する体制が適切であるかをどのように確認したのか、詳細をお示しください。

同社が提供する「バッジ制度」や「立替払い制度」による労働者への影響について、貴所としてどのように評価していますか?

3. 上場審査の透明性

3.1 審査基準と対応

タイミー株式会社のようなスキマバイトプラットフォーム企業に対して、特有の法令遵守リスクをどのように審査基準に組み込んでいるか、ご教示ください。

同社の事例が、貴所の上場審査基準やプロセスの改善に反映される予定があるかについてもお答えください。

3.2 上場審査における確認不足の認識

上場後、タイミー株式会社における未払い賃金問題や労働基準法違反の疑いが表面化したことについて、貴所として審査プロセスにおける確認不足があったとお考えでしょうか?その点に関するご見解をお聞かせください。

4. 市場全体への影響と責任

4.1 労働環境問題の市場影響

タイミー株式会社の労働環境に関する問題が、スキマバイト市場全体や関連する上場企業に及ぼす影響について、貴所としてどのように認識し、対応する方針ですか?

4.2 貴所の監督責任

上場企業としてのタイミー株式会社における法令違反や労働問題が発覚した場合、貴所が取るべき具体的な措置についてお示しください。

以上、本質問書に対するご回答を、2024年11月29日までに書面または電子メール形式にてご提出いただけますようお願い申し上げます。

貴所が今後も市場全体の透明性と健全性を確保するための取り組みを進められることを期待しております。

草草

東京証券取引所からの回答①(2024/11/26)

お問合せを頂きありがとうございます。

上場審査の内容に関する個別の照会については、回答いたしかねます。
ご理解いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

今後ともよろしくお願いいたします。

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このメールは送信専用アドレスから配信されています。
このアドレスに御返信いただいても受信できませんので御了承ください。
追加の御質問につきましては、改めて以下のリンク先から御連絡ください。

 ◆お問合せ
https://www.jpx.co.jp/contact/index.html
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当組合からの質問②(2024/11/26)

東京証券取引所 御中

前略

貴所の上場審査基準およびプロセスに関する透明性や法令遵守リスクへの対応について、以下の点についてご回答をお願い申し上げます。本質問は、上場を目指す企業の労働基準法をはじめとする法令遵守に関連する課題が、上場審査においてどのように取り扱われているかについて、一般的な観点から確認させていただくものです。

0. 副業者の労働時間管理に関する未払い賃金の問題

副業者については、通算した労働時間が法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える場合、割増賃金(残業代)の支払いが必要とされています。この現行法の下で、副業者を受け入れる企業は労働時間の厳格な管理を行う責任を負うと考えられます。

上場審査において、副業者の労働時間管理に関する法的リスクがどのように評価されるか、また、こうした問題に対応するための企業の取り組みがきちんと行われているかどうかについて審査基準にどのように反映され実施されているかについて、ご教示ください。

副業の実態と労働者の合計労働時間管理については、現行法のもと正確に調査し審査すべき重要な事項であるため、下記すべての質問に対しての前提ともなっています。

1. 上場審査における法令遵守リスクの扱い

1.1 労働基準法に基づく未払い賃金問題の評価基準

労働基準法に基づく未払い賃金問題(時間外労働や深夜労働に対する割増賃金の支払いなど)がある場合、著しく上場適格性に欠ける事態と言えますが、未払い賃金に対する貴所の基本的な審査基準をご教示ください。

1.2 付加金支払い義務の認識に関する審査対応

労働基準法第114条に基づく付加金支払い義務が発生する場合、企業の業績に大きく影響する可能性があり、投資家に不測の被害を与える可能性がありますが、上場審査においてそのリスクをどのように厳格に審査しているか、一般的なプロセスをお示しください。

2. 労働時間管理および労働環境に関する審査基準

2.1 労働時間管理の仕組みの確認方法

上場審査の一環として、申請企業の労働時間管理や労働環境における適切性をどのように確認されているかについて、貴所の一般的な方針をご回答ください。

2.2 労働者への影響を評価する基準

上場申請企業が賃金についての独自の制度や仕組みを有する場合は、その制度が労働法関連に違反するかしないかについては実態を正確に把握し審査する必要があります。労働者への権利侵害を未然に防ぐために、これらの審査についてはどのような基準を設置しているのかご回答ください。

3. 上場審査プロセスの透明性と改善

3.1 特定業種における法令遵守リスクへの対応

貴所は、法令遵守リスクが特に高い業種(例:労働時間管理が複雑なプラットフォームビジネス)に対して、一般の業種に比べて厳格な基準で審査すべきですが、審査基準にどのような違いを設けているのか、もし設けていないのであれば、今後基準の改善を行う予定があるか、どのように改善する予定か、ご回答ください。

3.2 確認不足が指摘される事例への対応

上場後に法令違反が発覚した場合、審査プロセスにおける確認不足があったとされる可能性について、貴所としてどのような検証や対応を行うのか、一般的な方針をお示しください。

3.3 複雑なプラットフォームを利用した企業に対する審査

3.1で指摘したリスクに対して貴所の対策が不十分な場合、前述の法令遵守リスクが特に高い業種が用いる複雑なプラットフォームを利用した複数の企業が、多額の未払い賃金を潜在的に含んだ違法状態でありながらも貴所の審査を受けて上場を成し遂げている可能性が非常に高いですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。またこれに該当する企業の数を正確に把握し、市場や投資家に与えるリスクを正確に勘案しているのか、ご回答をお願い致します。

4. 市場全体への影響と貴所の対応方針

4.1 労働環境問題の市場全体への影響評価

法令違反や労働環境問題が上場企業において発生した場合、それが市場全体に与える影響をどのように評価し、対応されているのか、貴所の方針をご教示ください。

4.2 貴所の監督責任に関する一般的な見解

上場企業における法令遵守問題が発覚した場合、貴所として取るべき措置や対応の方針について、一般的な見解をお聞かせください。

以上、貴所の上場審査プロセスの透明性と健全性を確認するための一般的な内容に基づく質問となります。本質問書へのご回答を、2024年11月29日までに電子メール形式にてご提出いただけますようお願い申し上げます。

貴所の審査プロセスの透明性向上および市場の健全な発展を期待しております。

草々

東京証券取引所からの回答②(2024/11/27)

先日ご返信させて頂きました通り、上場審査の内容に関する個別の照会については、回答いたしかねます。
ご理解いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

今後ともよろしくお願いいたします。

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