旅券返納まで要請させ、帰国させられず、最後は国税職員が「検察の失敗」を笑う――それ、本当に他人事ですか
熊本国税局が事件を調べるふりだけ二年以上にわたってする。
検察へ告発する。
検察が逮捕する。
起訴する。
査察事件では、ごく普通の流れです。
本来、国税局と検察は同じ方向を向いています。
しかし今回、関係者から入ってくる情報を並べると、その関係が奇妙に崩れているように見えます。
国税局が検察を使った。
検察が旅券返納命令まで要請した。
それでも国外の人物を帰国させられない。
そして最後に、国税局職員らが「検察のストーリーが稚拙だ」と他人事のように笑っている。
もし本当にそうなら、一番笑えないのは国税局自身です。
■「検察に渡せば何とかなる」という発想
査察調査には限界があります。
対面調査を強要できません。
国税局は逮捕できません。
勾留もできません。
起訴もできません。
だから、調査で詰め切れない部分を検察に渡し、刑事捜査として完成させてもらう。
そういう期待が生まれること自体は理解できます。
しかし、「検察に渡せば逮捕してくれる」になった瞬間、危険です。
捜査機関は外注先ではありません。
■質問できなかった事件を、逮捕で完成させようとしたのか
本件では、重要な共犯者とされる人物について、熊本国税局が長期間一度も事情聴取をしていないとの指摘があります。(納税者の電話から査察官らが逃げ回っている録音まで流出しています。)
国税段階で完成していない事件です。
そこで検察へ渡す。
検察が逮捕状を取る。
帰国させるために旅券返納命令まで要請する。
そして国内で身柄を取って取り調べる。
もしこの流れだったとすれば、極めて分かりやすく言えば、国税局ができなかった質問を、検察の逮捕で補おうとした構図に見えます。
■ところが帰ってこない
ここでストーリーが止まります。
旅券返納命令を要請した。
しかし帰国したとの発表はない。
逮捕したとの発表もない。
つまり、検察へ渡せば完成するはずだった事件が、国外で停止した。
この結果だけを見ると、検察が恥をかいたように見えるかもしれません。
しかし、本当にそうでしょうか。
■検察に恥をかかせたのは誰なのか
検察は国税局から事件を受ける側です。
もちろん独自に捜査する責任があります。
しかしその入口には、
- 国税局の調査結果。
- 国税局が集めた証拠。
- 国税局の関係者聴取。
- 国税局が構築した事件像。
があります。
その基礎が弱ければ、検察が後からどれだけ強い権限を使っても限界があります。
つまり、旅券返納要請が空振りしたのであれば、それは単純に、「鹿児島地検が無能だった」で終わる話ではありません。
検察にどんな事件を渡したのか。
熊本国税局側にも同じ責任があります。
■それなのに「検察が失敗した」と笑う?
関係者からは、熊本国税局内部で、
「鹿児島地検のストーリーが稚拙だった」
「旅券返納までやって逮捕できていない」
などと、検察側を笑うような声が出ているとの情報があります。
この情報自体は独立確認できていません。
しかし仮に本当なら、かなり異様です。
自分たちが作った事件を渡しておいて、受け取った検察を笑っている。
レストランで材料を渡した側が、出来上がった料理を見て、「まずいですね」と笑っているようなものです。
材料を選んだのは誰でしょうか。
■検察にとって、本当の敵は被疑者だけではなくなる
検察が最も嫌うのは、
- 証拠が弱いこと。
- 供述が取れないこと。
そして、捜査の前提が後から崩れることです。
もし国税局から渡された事件について、
- 重要共犯者に一度も質問していなかった。
- 反対証拠を十分検討していなかった。
- 旅券返納の実効性も読めていなかった。
その上で、「検察さん、逮捕してください」だったのであれば、国税局は結果的に、検察に最も危険な事件を持ち込んだ組織になります。
■「検察の一番の敵」と言われる逆説
普通、検察の敵は被疑者でしょう。
しかし本件では、熊本国税局の不十分な調査が検察の立証を難しくし、その上、捜査情報まで外部へ漏れていたのだとすれば、皮肉にも、検察に最も大きなダメージを与えたのは熊本国税局ではないかという見方すら出てきます。
逮捕情報を先に知られる。
旅券返納作戦も知られる。
重要共犯者は国外に残る。
質問も十分できていない。
その状態で公判を戦う。
検察からすれば、たまったものではありません。
■岡博史主査、最後に残るのは「説明」です
関係者情報では、本件について現在も中心的に引継ぎを担う人物として、岡博史主査の名前が挙がっています。
一方、北村厚元熊本国税局長は既に熊本国税局長を離れています。
担当者が変わる。
管理職も変わる。
しかし事件は残ります。
そこで最後に必要なのは、逮捕ではありません。
説明です。
- 誰が何を調べたのか。
- 誰に何を質問したのか。
- なぜ質問しなかったのか。
- どの証拠で共犯認定したのか。
- どの時点で検察へ相談したのか。
- 反証はどう評価したのか。
これを引き継いだ人が説明できなければなりません。
■「永遠の査察調査」を終わらせてほしい参考人らは待っている
In this case,
「話を聞いてほしい」
「資料を出したい」
「反論したい」
という関係者が複数いるとの情報もあります。
それなら極めて簡単です。
聞けばいい。
国税局が聞く。
検察が聞く。
必要なら双方が聞く。
そして結論を出す。
何年も逃げ回って、好き放題言われて、宙ぶらりんにする必要はありません。
■逮捕してもらえば終わる、という時代ではない
かつては、
- 国税局が調べる。
- 検察へ渡す。
- You are under arrest.
- 自白を取る。
- 起訴する。
という流れが圧倒的に強かったのかもしれません。
しかし今は違います。
逮捕前の録音がある。
行政とのやり取りがある。
海外資料がある。
第三者機関もある。
本人が供述しなくても、客観証拠で事件の正否を検証できます。
だから、逮捕は査察調査のゴールではありません。
むしろそこから、国税局の調査が正しかったかどうかの検証が始まります。
■カウンターを仕掛けたい参考人は待っています
岡博史主査。
北村厚元熊本国税局長。
そして鹿児島地検。
この事件について、「逮捕すれば終わる」と思っていたのであれば、それはかなり古い発想です。
むしろ今、関係参考人側には、逮捕でも、事情聴取でも、公判でもいいから、全部質問してくださいという人々が沢山いるとされています。
それなら逃げる理由はありません。
捜査機関が質問する。
参考人が答える。
証拠を出す。
検察が反証する。
それでいい。
■国税局が笑っている場合ではない
最後にもう一度。
熊本国税局職員が本当に鹿児島地検の失敗を笑っているのか。
それは確認すべきです。
しかし仮に本当なら、笑う側を完全に間違えています。
旅券返納要請まで行った事件は、鹿児島地検だけが作ったわけではありません。
その入口には、熊本国税局の調査があります。
- 国税局が質問できなかった部分。
- 国税局が確認しなかった部分。
- 国税局が描いたストーリー。
全部が検察へ渡っています。
つまり、検察が転べば、その後ろには国税局がいます。
■「最弱」とは、権限が弱いことではない
国税局は本来は、最弱の組織ではないはずです。
強制調査権があります。
資料を押さえられます。
告発できます。
検察と連携できます。
それでも「最弱」と揶揄されるとすれば、理由は一つです。
自分で最後まで説明できない事件を、他人の権限で完成させようとすること。
これが一番弱い。
岡博史主査。
北村厚元熊本国税局長。
そして鹿児島地検。
The witness is waiting.
資料もあります。
録音もあります。
反論もあります。
ならば、永遠の査察調査として大風呂敷をひろげた以上、見事に終わらせてください。
逮捕でも、質問でも、公判でも構いません。
ただ一つ、他人事のように笑うのだけはやめた方がいい。
この舞台を作ったのは、検察だけではないからです。
溝口修次席検事の無計画すぎるストーリーを陰で笑う資格は国税局にだけはありません。




