横浜地検・小林検察官と「匿名通報を受ける国税・警察」
2026年7月27日、検察ユニオンの組合員は、横浜地方検察庁特別刑事部へ電話をかけました。
目的は、金本重徳氏の捜査内容を聞き出すことでも、担当検事へ圧力をかけることでもありません。エンジェル税制を利用して株式会社Nへ出資した複数の組合員から、出資詐欺の被害相談が寄せられており、その情報と証拠資料を横浜地検へ提供するためでした。
受付に「小林検事へつないでほしい」と伝えたところ、電話は別の人物へ転送されました。電話口の人物は、次のように名乗っています。
小林氏:「検察官の小林でございます」
ただし、小林氏は、金本重徳氏事件の担当検事であるかについては明らかにしていません。本記事でも、小林氏を同事件の担当検事と断定するものではありません。
問題はその後です。
検察ユニオンの組合員は、株式会社Nへ出資した複数人が、中野爵喜被告の行政照会記録と、公認会計士・齊藤悟志氏による「合法的な節税である」との説明を信じて出資していたことを伝えようとしました。
株式会社Nに事業実態がなく、出資者が虚偽の説明によって資金を拠出させられたのであれば、金本重徳氏を含む出資者は、脱税の共犯者ではなく、出資詐欺の被害者である可能性があります。
ところが、小林検察官は、情報提供の内容を最後まで聞かず、証拠資料の提出先も案内しないまま、通話を終了しました。
検察ユニオンは、この約8分40秒の録音を証拠保全しています。

横浜地検・小林検察官が最初に確認したのは被害内容ではなく情報源
検察ユニオンの組合員が、小林検察官が担当であると聞いたと述べた直後、小林氏は、まず情報の入手元を確認しました。
小林検察官:「どなたから私が担当されてると伺ったんですか?」
組合員が「組合員です」と答えると、さらに次の質問が続きました。
小林検察官:「具体的にはどなたですか?」
情報提供者の信用性や、電話をかけてきた者の身元を確認すること自体は、不自然ではありません。捜査機関が虚偽通報や嫌がらせ通報へ警戒することも理解できます。
しかし、この時点では、検察ユニオン側は、提供しようとしている情報の具体的内容をまだ説明していません。
誰が情報を漏らしたのかを聞く前に、その情報が新たな犯罪被害や証拠に関するものかを聞くことはできなかったのでしょうか。
横浜地検・小林検察官は「捜査情報が外へ出ている」と自ら言及
通話開始から約3分19秒、小林検察官は、次の趣旨を述べています。
小林検察官:「捜査に関係するようなこととか、そういうことであると、あまり外に出ている自体があまりよろしくないので」
この段階で、検察ユニオン側は、馬見塚メモ、担当検事名、逮捕前の捜査情報漏洩について、まだ質問していません。
検察ユニオンは、この発言を「横浜地検が情報漏洩を認めた」と断定するものではありません。
しかし、なぜ小林検察官は、こちらが情報漏洩を追及する前から、「捜査に関係することが外に出ている自体がよろしくない」と述べたのでしょうか。
金本重徳氏の逮捕前には、小林検察官の氏名だけでなく、別の検事名、捜査上問題視されている取引、共犯関係に関する見立てなどが、関係者間へ流通していたとの情報が寄せられています。
TBSでは「横浜市 今年1月」、ANN系報道では「横浜市・旭区 3月」と表示された金本重徳氏の映像が、7月23日の逮捕当日に使用されました。
捜査情報が外へ出ていることが本当に「よろしくない」と考えているのであれば、情報提供者の特定だけではなく、横浜地検内部や記者クラブへの情報流通も調査すべきです。
株式会社Nへの出資詐欺の可能性を説明しようとすると通話終了へ
検察ユニオンの組合員は、株式会社Nへ金本重徳氏と同様に出資した組合員が複数存在することを説明しました。
さらに、中野爵喜被告が、中小企業庁、東京都、鹿児島県、税務署等への行政照会を詳細に記録した資料を出資者へ示していたこと、公認会計士の齊藤悟志氏が、株式会社Nへの出資は合法的なエンジェル税制の利用であると説明していたことを伝えました。
これに対して、小林検察官は、次のように述べています。
小林検察官:「山本さんの今のお電話の趣旨は何ですか? そういう話があると、ちょっと捜査に関わる可能性があるので、ちょっと私としては何もお答えできませんよ」
検察ユニオン側は、回答を求めているのではなく、これから情報提供の趣旨を説明すると明確に伝えました。
その後、株式会社Nに事業実態がなかったのであれば、出資者に対する詐欺ではないかと説明しようとしたところ、小林検察官は、会話を途中で遮っています。
小林検察官:「やっぱりですね、いろいろお話を伺っている内容に出てくることとか、今、金本さんって名前も出てきて、ちょっと捜査に関わる可能性があるんである以上、我々ちょっとこのままお話をできることもないし」
検察ユニオン側は、「答えられないことには答えなくてよい」「捜査してもらえるのであれば」と伝えました。
それでも小林検察官は、次のように対応しています。
小林検察官:「対応ができかねる」
小林検察官:「電話を切らせていただきます」
最後に、検察ユニオン側が、出資者は投資資金の返還を求めていると伝えたところ、小林検察官は、次の発言をして通話を終了しました。
小林検察官:「今現在捜査してる話に関わってやはり来ているので、ちょっと電話これ以上お答えしませんので、大変恐縮ですが、これで切らせていただきます」
横浜地検は回答を拒否したのではなく、情報の受領まで拒んだのではないか
個別事件の捜査状況を、無関係な第三者へ回答できないことは当然です。
担当検事名、押収証拠、被疑者の供述、今後の捜査方針を外部へ説明できないことも理解できます。
しかし、捜査内容を回答しないことと、新たな犯罪被害に関する情報を最後まで聞かないことは、別の問題です。
検察ユニオン側が求めていたのは、横浜地検の内部情報ではありません。
株式会社Nへ出資した複数人が、行政照会記録と公認会計士の説明を信頼して出資し、現在は出資詐欺の被害者である可能性を訴えているという、外部から持ち込まれた新たな情報でした。
小林検察官は、「匿名情報は検察として受け付けない」と明言してはいません。
しかし、氏名や連絡先が分からないことを繰り返し問題視し、情報提供の要旨を最後まで聴かず、書面の送付先、証拠の提出方法、被害申告を受ける部署も案内しませんでした。
結果として、匿名の被害情報は、横浜地検の入口で遮断されています。
国税庁は匿名情報を全件確認すると明記している
国税庁は、「課税・徴収漏れに関する情報の提供」というオンラインフォームを設けています。
このフォームでは、情報提供者本人の氏名、年齢、対象者との関係、連絡先は、全て「任意」です。
さらに国税庁は、次のように明記しています。
「提供された情報は、全件、その内容を確認しています」
情報源についても任意記載であり、帳簿、領収証、契約書、通帳その他のデータを添付することができます。
Reference:National Tax Agency: Provision of information regarding tax assessment and collection omissions
東京国税局と横浜地検は、金本重徳氏事件を合同で捜査していると報じられています。
一方の国税庁は匿名でも情報を受け、全件確認すると公表している。もう一方の横浜地検では、情報提供者の具体的氏名と連絡先が分からないことを理由に、被害情報の説明そのものが途中で終了する。
同じ事件を扱う二つの国家機関で、情報の入口がここまで違ってよいのでしょうか。
警察も対象事件を限定しながら匿名通報を捜査へ活用している
警察庁・警視庁も、対象となる事件を限定しながら、「匿名通報ダイヤル」を運用しています。
これは、市民から匿名で提供された情報を、警察庁の委託を受けた民間団体が警察へ通報し、捜査等に役立てる制度です。
対象には、暴力団等の犯罪組織が関与する犯罪、特殊詐欺、人身取引、犯罪インフラ事犯などが含まれます。
Reference:Metropolitan Police Department "Regarding the Anonymous Tip Hotline"
警察の匿名通報ダイヤルが、全ての犯罪を対象としているわけではありません。それでも、匿名だから即座に排除するのではなく、情報の価値を確認して捜査へ活用する仕組みを設けています。
国税も警察も、匿名情報を受ける制度を持っている。
それなのに、警察や国税から事件を引き継ぎ、自らも直接捜査権を持つ検察だけが、情報提供者の身元確認を優先して、情報の中身を最後まで聞かないのであれば、犯罪情報の受領体制として明らかな空白があります。
横浜地検が「国税の丸投げ先」になるなら反対資料も受け取ってください
検察ユニオンは以前から、国税が行った事実認定を、検察がそのまま受け取るだけの構造を、「国税の丸投げサービス」と呼んでいます。
国税が集めた有罪方向の資料は受け取る。
国税が作成した資金図も受け取る。
国税が告発した事件も引き受ける。
しかし、国税庁自身が匿名で受け付けているような、反対方向の情報や新たな被害申告は、氏名が分からないとして入口で切る。
それでは、合同捜査ではなく、国税が選んだ筋書きだけを配達するサービスになってしまいます。
検察ユニオンの組合員全員を無条件で対面聴取しなければならないという法律上の義務があるわけではありません。何万人もの人から一斉に事情を聴くことも現実的ではありません。
しかし、誰の話を聴く必要があるかを判断するためには、少なくとも情報の要旨を受け付けなければなりません。
情報を聞く前に切ってしまえば、必要性の判断すらできません。
横浜地方検察庁・小林検察官への公開質問
- 2026年7月27日、横浜地検特別刑事部が受けた検察ユニオンからの電話を記録していますか。
- 電話を受けた人物が「検察官の小林」と名乗った事実を認めますか。
- 小林検察官は、金本重徳氏事件の担当者ではないとしても、同事件に関係する情報を受領・回付できる立場でしたか。
- なぜ、提供しようとした情報の要旨より先に、担当検事名の情報源と組合員の具体的氏名を繰り返し確認したのですか。
- 情報提供者の氏名・連絡先が不明である場合、横浜地検は一般に犯罪情報を受け付けないのですか。
- 匿名情報を受け付けないとする法令、通達、内規が存在する場合、名称と内容を公表できますか。
- そのような規定がない場合、今回の電話を最後まで聴かなかった理由は何ですか。
- 個別事件について回答できないことと、新たな犯罪被害の情報を受領することを、なぜ区別しなかったのですか。
- 株式会社Nへ出資した複数人が、出資詐欺の被害を訴えている可能性を、担当部署または上席へ報告しましたか。
- 中野爵喜被告と齊藤悟志氏による勧誘・制度説明について、新たな捜査事項として検討しましたか。
- 通話中、書面提出先、証拠提出方法、被害申告窓口を案内しなかった理由は何ですか。
- 今後、匿名または仮名による犯罪情報を受領し、内容を確認した上で必要性を判断する制度を整備しますか。
- 検察ユニオンが保全する録音と書面資料を、情報源秘匿を前提に受領しますか。
Open Questionnaire to the Supreme Public Prosecutors Office and the Ministry of Justice
- 検察庁には、一般犯罪に関する匿名情報を受け付ける全国共通の窓口がありますか。
- 存在する場合、なぜ国民に分かる形で案内されていないのですか。
- 存在しない場合、国税庁や警察庁と同様の匿名情報提供制度を設けますか。
- 個別事件の捜査内容を回答できないことを理由に、新たな被害申告や証拠提供まで拒まないよう、全国の検察庁へ指示しますか。
- 情報提供者の身元特定よりも、まず情報内容を確認する運用を整備しますか。
- 横浜地検の今回の電話対応が適切だったか、監察上の検証を行いますか。
犯罪を減らしたいなら、自分たちの筋書きにない情報ほど聴くべきです
検察ユニオンは、匿名の情報を無条件で事実として認定しているわけではありません。
匿名の情報も入口では受ける。未確認の部分は未確認と明記する。録音、文書、送金記録、複数証言と照合する。そして、権限を持つ機関へ公開質問を行う。
これが検察ユニオンの基本姿勢です。
捜査機関に求められる水準は、それより高いはずです。
自分たちの事件構成に合う情報だけを聴き、別の犯罪被害を示す情報は身元不明として切るのであれば、捜査は真相解明ではなく、最初に作った物語の補強作業になります。
金本重徳氏を犯罪者とする情報は聞く。
金本重徳氏を出資詐欺の被害者とする情報は、話の途中で切る。
その選別が本当に行われているのであれば、横浜地検が守ろうとしているのは社会の安全ではなく、自分たちのストーリーではないでしょうか。
小林検察官には、今回聞かなかった話を、今度こそ記録とともに確認するよう求めます。



